研究課題
溶液NMRによる蛋白質の立体構造解析にはX線の分子置換法に相当する技術が存在せず、未だに立体構造決定に多大な時間を要している。そこで本研究ではNMRによる蛋白質の立体構造解析を劇的に高速化する新規手法「NMR分子置換法」を開発することを目的としている。具体的には、阪大独自のNMR統合解析ソフトMagROを拡張発展させ、配列類似性の高い蛋白質の既知構造を立体構造解析の鋳型として用いる完全自動NMR構造解析システムの開発を目指している。平成28年度は、(1)自動化学シフト帰属の評価法を確立し、(2)花成ホルモン受容体の試料調製、および、(3)類似蛋白質の既知構造を鋳型として利用する完全自動NMR構造解析システムの開発を行うことを計画し、これらに取り組んだ。その成果は以下の通り。(1)自動化学シフト帰属の評価法の確立では、150残基程度の小さな蛋白質に適用可能な鋳型構造を用いない簡易型完全自動NMR構造解析システムの開発に成功し、自動化学シフト帰属の評価法を確立しつつある。(2)花成ホルモン受容体の試料調製では、重水素標識やアミノ酸選択標識に成功し、主鎖の7割ほどの帰属に成功しつつある。(3)類似蛋白質の既知構造を鋳型として利用する完全自動NMR構造解析システムの開発では、メチル基選択的軽水素標識体を用いたメチル領域の4D高分解能NOESYを測定とその解析に成功した。さらに、MagROを拡張発展させ、簡易型完全自動NMR構造解析システムにメチル領域の解析ルーチンを組み込むことにも成功した。
2: おおむね順調に進展している
ほぼ当初計画していた通りに研究が進展している。
今後も当初の計画通り、着実に研究を進める。
平成28年4月に研究代表者が横浜国立大学に異動となり、研究実施場所の変更に伴う研究環境の整備に時間を要したため。
平成28年度に実施予定であった実験を遂行するための消耗品に充てる。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 5件、 査読あり 7件、 謝辞記載あり 3件)
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