研究課題/領域番号 |
16K14682
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
加藤 貴之 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (20423155)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 籠目型DNA / DNA折り紙 / べん毛モーター / MotA複合体 |
研究実績の概要 |
本研究は通常のクライオ電子顕微鏡観察において粒子の選択および3次元再構成がうまく計算できないような分子量100kDa以下の分子に対して、籠目型DNAを鋳型として用いて、分子を籠目の中心位置に固定することで粒子の選択を可能にするための技術を開発することを目的としている。 籠目型DNA実験に用いる標的分子として、回転べん毛モーターの固定子MotA/MotBを用いることにした。MotA/MotB複合体はそれぞれ4:2の割合で結合することで複合体を形成すると考えられており、4:2複合体を一つの単位として、回転子であるべん毛基部体の周りに最大11個配置することで300Hzもの高速回転を実現していると考えられている。 近年、MotAはMotBなしで4量体を形成することが明らかとなっており、MotAホモ4量体での分子量は128kDaと非常に小さい。より小さな分子に対して観察、解析できる技術を開発することを目的としているため、今回の実験ではMotA複合体を用いることにした。DNAは設計次第で様々な形状や大きさの鋳型を作ることが可能となるため、このMotA複合体に適した籠目をデザインすることが可能であり、そのためには粒子の大きさの情報が必要になる。そこでまず、粒子の大きさを定量的に測定するために、通常のクライオ電子顕微鏡観察での撮影及び構造解析を試みた。粒子の小ささのために画像のS/Nが悪く、粒子の自動選択、構造解析はどちらも成功せず、分子の大きさの定量的な測定には至らなかった。そこで、MotA複合体を重金属で染色、固定した試料を用いて、構造解析を行ったところ、分解能26オングストロームでの解析に成功した。大きさと形状を評価するには十分な分解能であり、高さ、幅、奥行きはそれぞれ約93、85、80オングストロームで、細胞質側に大きなドメインを持つことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回、ターゲットとしたべん毛モーターの固定子の大きさはわずか190kDa程度と非常に小さく、特に今回実験に用いたMotAのみからなる複合体は128kDaと更に小さく、一般的にクライオ電子顕微鏡での構造解析は非常に困難である。実際今回の実験でMotA複合体のクライオ写真を撮影し、自動での粒子選択、構造解析を行ったが、どちらも成功しなかった。 しかし、医薬分野におけるターゲット分子はこれと同程度か、それよりも小さいことを考えると、それを克服する技術は必須要求である。 今回の実験で、籠目型DNAを用いて鋳型を作成し、その六角型の中心に標的分子を固定するためには、標的分子の大きさと形状の情報が必須である。今回分解能オングストロームでの構造解析によって、詳細な構造を明らかに出来ないが、この標的分子において最も適した籠目型DNAによる鋳型をデザインする上で最も重要な大きさの情報を得ることができた。この情報をもとに籠目型DNAのデザイン及び制作に挑戦する。
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今後の研究の推進方策 |
今回の実験で、ターゲットとして用いるMotAホモ4量体の大きさと形状が明らかになった。次にこのターゲットタンパク質に適した籠目型DNAのデザインと作成を行う。今回用いる籠目型DNA鋳型にはそれぞれ約30塩基になる3本の一本鎖DNAと、タンパク質が共有結合できる長さ約30塩基の一本鎖DNAを原料として用いる。まず、基盤となる3本の一本鎖DNAを当モル混合し、アニーリングすることで籠目型DNA鋳型を作成する。一方、タンパク質結合能を持つDNAに標的タンパク質を結合させ、籠目型DNA鋳型と混合して、標的タンパク質が籠目の中心に存在するタンパク質-DNA複合体を作成し、クライオ電子顕微鏡による観察を行う。 得られた画像から、六角形の中心を選び出し、この画像をもとに構造解析を行う。
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