本研究は通常のクライオ電子顕微鏡観察において粒子の選択および3次元再構成がうまく計算できないような分子量100kDa以下の分子 に対して、籠目型DNAを鋳型として用いて、分子を籠目の中心位置に固定することで粒子の選択を可能にするための技術を開発することを目的としている。 籠目型DNA実験に用いる標的分子として、回転べん毛モーターの固定子MotA/MotBを用いることにした。MotA/MotB複合体はそれぞれ4:2 の割合で結合することで複合体を形成すると考えられており、4:2複合体を一つの単位として、回転子であるべん毛基部体の周りに最 大11個配置することで300Hzもの高速回転を実現していると考えられている。 近年、MotAはMotBなしで4量体を形成することが明らかとなっており、MotAホモ4量体での分子量は128kDaと非常に小さい。より小さな 分子に対して観察、解析できる技術を開発することを目的としているため、今回の実験ではMotA複合体を用いることにした。DNAは設計次第で様々な形状や大きさの鋳型を作ることが可能となるため、このMotA複合体に適した籠目をデザインすることが可能であり、そ のためには粒子の大きさの情報が必要になる。昨年、負染色法によってMotAの構造解析を行い、その大きさと形を測定することに成功し、その結果約93、85 、80オングストロームで、細胞質側に大きなドメインを持つことが明らかとなった。この大きさの情報をもとに、籠目型DNAorigamiの中心空間がMotAよりも大きくなるように、DNAorigamiの材料となる4本のDNAをデザインした。そのうち1本にはアビジンタグをつけることで、標的分子が特定の位置に固定化されるように設計されている。この籠目型DNAorigamiを不染色法、クライオ電子顕微鏡で評価した。
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