研究実績の概要 |
核磁気共鳴 NMR を用いて蛋白質の立体構造やダイナミクスを解析する場合、各ピークがどの原子核のスピンに対応するのかを決める必要があり、これを帰属と呼ぶ。帰属は分子量が 30 kDa 以下の場合には比較的プロトコール通りに順調に進行するが、50 ~ 200 kDa のレベルになると非常に難しくなる。それは、磁気の緩和が高分子量になるほど速くなるためである。これを克服する方法として、蛋白質を重水素化したり、測定の温度を上げたりする方法が採られている。超好熱菌由来の蛋白質では高温でも安定な場合があり、40~50℃ での測定が可能である。ところが、温度を 50℃ などに上げると、今度はアミド水素の水との交換が速くなり、1HN を基軸とした測定では、この交換による信号強度のロスが無視できなくなる。そこで、筆者は 13Ca などを基軸とした測定法を提案した。
この実験では4量体で 150 kDa となる蛋白質を調製した。好熱性バチルス由来であるため、40℃ でも安定であることを確認した。2H, 15N, 13C 安定同位体を入れた最少培地で大腸菌を培養し、この蛋白質を発現させた。また、[2H, 15N]-glucose を入れた培地に Ile, Leu, Val の前駆体となる [13C, 1H]-methyl [2H, 12C]-2-ケト酸を入れた培地でも大腸菌を培養した。これからは Ile, Leu, Val のメチル基だけが孤立して 13C, 1H で標識されており、その他は 12C, 2H で標識された蛋白質を調製することができた。
後者の蛋白質からは、メチル基の信号が期待される個数だけ観測された。前者の試料についても、1H-15N TROSY スペクトルを観測することができた。
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