研究実績の概要 |
時計タンパク質KaiA, KaiB, KaiCはシアノバクテリアの概日時計システムを駆動する。このシステムの特異な点は、KaiA, KaiB, KaiCをATPとともにチューブの中で混合すると生体内で実現されている時計機能がそのまま生体外でも再現できるという点にある。これは生物時計研究が化学や物理の視点から研究できるという点で重要な特長である。 特にKaiCはATP結合部位を有し、シアノバクテリア概日時計発振機構の中核的役割を担っている。KaiCは主にATPを加水分解して「時計の進む速さ」を規定するC1リングと自己リン酸化・脱リン酸化によって細胞内の他の関連タンパク質群に時刻情報を与えて「時計の針」の役割を果たすC2リングという2つのドメインによって構成される。したがってC1リングの構造・C2リングの構造およびC1リングとC2リングのカップリング機構を明らかにすることで、KaiCが地球の自転周期をどのように分子内に蓄えて機能を発揮しているかが考察できる。 本研究ではまずSynechococcus elongates PCC7942由来KaiCのX線結晶構造解析に取り組み、C2リングが異なる時刻情報(リン酸化しているか、脱リン酸化しているか)を表示しているときに全体構造がどのように変化するかを観察することを目標とした。これまで他国の研究チームによってリン酸化されたKaiCの結晶構造が報告されてきたが、我々は脱リン酸化状態におけるKaiCの結晶構造を取得することが出来た。これはKaiCの主観的夜(リン酸化)と主観的昼(脱リン酸化)における構造比較ができるようになった点で画期的である。
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