研究課題/領域番号 |
16K14685
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
古池 美彦 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 助教 (70757400)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 / 時計タンパク質KaiC |
研究実績の概要 |
昨年度から引き続いてシアノバクテリア由来の時計タンパク質KaiCのX線結晶構造解析を進めた。所属先に導入された実験室系X線結晶構造解析装置と放射光施設における構造解析システムの両方において同一の結晶を分析することで、実験室でも結晶品質の確認等の必要な操作を効率的に行えることが確認できた。こうした技術的基盤の上で、野生型だけでなく諸々の変異体に関しても析出した結晶の品質を評価している。精製過程、結晶化過程、結晶凍結過程それぞれに修正を加えて結晶品質の向上を目指した結果、複数の晶系において結晶が析出することが確認された。同時に蛍光プローブを導入したKaiC-C1ドメインの結晶構造解析も進め、溶液中におけるKaiC動態の解明に貢献することができた。 これまで生化学的・物理化学的実験においては研究実績の豊富なSynechococcus elongates由来もしくは高い安定性が保証されたThermosynechococcus elongatus由来のKaiCが利用されることが多かった。今年度は多様な環境に生息する様々なシアノバクテリアのKaiCに関する情報を収集し、それらのアミノ酸配列情報を取得した。復原祖先型においてはN末やC末といった末端配列が一義的に特定できない可能性が高いが、こうした多様なKaiCホモログを用いて種間でドメインごとアミノ酸配列を交換したキメラ体を複数準備することで末端配列が機能に及ぼす影響の程度を見積もることが可能となった。ただし祖先型の配列推定方法に関しては様々な置換モデルを適用しながら現在も検討中であり、実際にタンパク質レベルでの実証実験を実施するには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
KaiCのX線結晶構造解析はおおむね順調に進展しており、諸々の表現型をもつ変異体の結晶化を加速させたい。また今年度に蓄積された結晶化条件をはじめとする研究成果を基盤にすれば、今後得られるであろう祖先型KaiCについても円滑に構造解析を進めることが可能である。祖先配列推定については困難な部分が把握されつつあり、当初予定よりも遅れがみられる。
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今後の研究の推進方策 |
KaiCの構造解析に関する成果は1-2年以内を目処に査読論文として発表できるようにさらに構造観察を基盤にした新規の変異体の作製や理論計算との共同作業を通じて研究を進める。祖先配列推定で関門となる末端配列の取り扱いについてはホモログのKaiCとのキメラ体を用いて生化学実験を進めることにより、次年度中には一定の方向性を示したい。
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