研究課題/領域番号 |
16K14686
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
山田 悠介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教 (20391708)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
H28年度からの解決すべき課題として、結晶化ドロップの回折イメージング法の確立における測定装置の制御システムおよび駆動ステージの不具合があった。これは、回折イメージング法を実用的に使用するうえで広い視野を高速にスキャンするために解決が必要不可欠なものであるが、ハードウェアとソフトウェアの両面からの改修が必要であった。ソフトウェアの改修により制御システムレベルでは十分な精度でデータ収集が行えるようになった。しかしながらハードウェアにおいては、ステージの駆動状況をリアルタイムで取得しステージ制御にフィードバックする仕組みの導入を試みているが、既存システムとの接続するために必要な自作電気回路の問題から正常なフィードバックシステムの構築が依然出来ておらず、早急に対策を取る必要がある。 回折データの結晶画像へのマッピングは予定通り進めることが出来、結晶化ドロップ中のタンパク質結晶の識別および結晶化ドロップのスコアリングは可能となった。ただし、別予算により高解像度かつ高速な検出器が導入されたため、より多量のデータを一度に取り扱えるようマッピングの仕組みを改良する必要が出てきている。回折スキャンで得られた結晶の識別やスコアリングのデータと結晶化条件データベースとの連携も取れるようにデータベースシステムの改修を進めることが出来た。H29年度に計画していた、この連携を利用した結晶化条件の導出については未完であり、鋭意進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
H28年度は所属期間の長期海外派遣制度により6か月間の海外出張を行っていた。H29年度はこれによる遅れを挽回すべく努めたが、同じくH28年度に直面した制御システムおよび駆動ステージの精度の問題への対策に多くの時間を割く必要があったこともあり、全体的に計画が遅れてしまった。 駆動ステージの精度の問題を解決するためには、ステージの制御システムにフィードバック機能を導入することが有効であると考え、そのためのハードウェア整備を行ったが既存システムとの連携に電気回路を自作する必要があり、現在もこの動作検証を続けている。 得られた回折データを処理し、結晶化ドロップ画像へマッピングし、ドロップ中のタンパク質結晶を識別するためのソフトウェアについては開発を行った。また、結晶化データベースと回折データのデータベースを連携させる機能拡張も実施した。H29年度ではさらに、これらのソフトウェアと連携機能を用いて最適な結晶化条件の導出を行う計画であったが、この部分については未実施である。 本研究は本来2年間のプロジェクトということで申請していたが、上述する遅れから2年間では完遂することが難しく、3年目への延長を申請し、許可いただいた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を実用化するうえでは、高速な回折スキャンを行うことは必要不可欠であり、そのための基礎となるステージ駆動の高精度化は無くてはならないものである。今年度も第一優先でこの実現に取り組む。そのためにステージ制御のフィードバック導入以外にも、ステージの軽量化など別の方向からの解決策も模索する。最適な結晶化条件の導出については、必要な基本機能は揃えられたので、これを基に開発を行う。そして、今年度後半にはモデルタンパク質のみならず、一般のタンパク質の結晶化プロジェクトにも応用していきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、結晶化のスコアリングと最適結晶化条件の提案のためのデータ解析用ワークステーションの購入を予定していた。しかしながら、計画の遅れから延長申請をした際に、ワークステーションの購入も出来る限り本格仕様が始まるまで遅らせたほうがよいという判断から、予算使用を控えた。 次年度ワークステーション購入を中心に使用をする計画である。
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