研究課題/領域番号 |
16K14691
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 邦律 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (20373194)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オートファジー / オートファゴソーム / オートファジックボディ / オルガネラ / RNA / Atg15 |
研究実績の概要 |
真核細胞が栄養飢餓にさらされると、細胞内分解システムであるオートファジーが誘導され、自身の細胞質成分を分解して再利用することにより、生存に必須な生体高分子を合成して厳しい環境に適応しようとする。オートファジーによる被分解物は球状の二重膜胞であるオートファゴソーム(以下AP)に内包されることで分解コンパートメントである液胞/リソソームにおいて分解される。これまでは、タンパク質やオルガネラがオートファジーによる分解の対象として研究されてきたが、最近になってオートファジーが細胞内でRNAを分解する過程が知られるようになってきた。本研究ではAP内部に取り込まれるRNAを網羅的に同定することで、被分解対象となるRNAのプロファイルを解明し、オートファジーが核酸のリサイクルに果たす役割を解明する。 RNA sequencingに使用するサンプルは、申請者らにより開発された単離法(Suzuki et al., 2014)を用いて単離された出芽酵母のAPを利用して行うことを予定していた。しかし、このAP単離法で分画されたAP画分にはミトコンドリアが混入するので、平成28年度はまずAutophagioc body(AB)の使用を検討した。ABはAPの外膜が液胞膜と融合し、液胞内に放出されることによって生じるオルガネラなので、積荷はAPと同一である。野生型の酵母では、ABはほどなく分解されるが、AB分解に関わるAtg15を欠いた変異酵母ではABは分解されずに液胞内に蓄積する。ABを蓄積した液胞を単離する手法は既に報告がある(Takeshige et al., 1992)。我々の研究グループは平成28年度にAtg15を欠いた酵母を用いてABを蓄積した液胞を単離可能である事を示した(未発表データ)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は単離AP画分からこれらのmRNAを検出し、その後全RNAに対してRNA sequencingを実行する計画であった。しかしながら、既存のAP単離法では、AP画分へのミトコンドリアの混入が避けられない。申請者らの研究によれば、AP形成不能株を用いた場合でも、AP画分には多くのミトコンドリアタンパク質が検出された。しかも、ミトコンドリアのリボソームに由来するタンパク質も多数検出されたのである(Suzuki et al., 2014)。つまり、RNA sequencingを行った場合でも、ミトコンドリアの混入によるバックグラウンドの上昇は避け得ない。 これらの事実を再検討した結果、当初の予定を変更し、単離液胞を使用する方法を導入することとした。上述のように我々は、平成28年度にAtg15を欠いた酵母を用いてABを蓄積した液胞を単離可能である事を示した。これは当初予定されていたAP画分を用いた予備的解析を省略して、より進んだ段階の研究をしていることになる。こうしたことから、現在までの進捗状況に問題はないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は当初の予定を変更してAB単離法の確立を行い、一定の成果を得た。この成果を基盤に平成29年度中にRNAプロファイルデータを得ることを目標とする。まず、単離AP画分からrRNAおよびmRNAが抽出されていることをNorthern blotにより確認する。検出のコントロールには細胞全体から抽出されたRNA画分を用いる。RNA sequencingに供するサンプルは、野生型酵母とオートファジー欠損株の全RNA、および野生型酵母とオートファジー欠損株から得たAB画分から抽出した全RNAの4種類を想定している。RNA sequencingはダイナミックレンジの広い解析法なので、本RNA sequencingによりある程度の数のmRNAが検出できれば、そのまま規模を拡大して解析を進める。
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