研究課題/領域番号 |
16K14693
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堅田 利明 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 教授 (10088859)
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研究分担者 |
福山 征光 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 講師 (20422389)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 食餌環境 / RNA結合タンパク質 |
研究実績の概要 |
NHL-2の発現組織を明らかにするためにCrispr-Cas9システムを用いて、ゲノム上のnhl-2タンパク質コード領域にGFP遺伝子を挿入し、NHL-2::GFP融合タンパク質の発現分布を調べた。NHL-2::GFPは全ての組織で発現がみられ、先行知見の過剰発現実験系で得られた結果と同様に、細胞質でPボディと推測される粒状構造に分布することが認められた。一方、NOS-1は他の動物のNANOSと同様、生殖細胞に局在することが先行知見で報告されているが、体細胞性組織における分布に関する報告はない。そこでNOS-1の組織分布を明らかにするために、nos-1遺伝子座をカバーする約27 kbのゲノム断片をもつfosmidベクターを用いて、nos-1のコード領域にGFPを挿入したレポーター遺伝子を作成した。このfosmidレポーター遺伝子に由来するNOS-1::GFPは、頭部の感覚神経や介在神経と尾部周辺の数細胞で発現し、神経前駆細胞を含む他の組織では発現が検出されなかった。貧栄養条件下と摂食条件下でNHL-2::GFPとNOS-1::GFPの発現パターンを調べたところ、両条件下で発現量や細胞内局在の顕著な変化は検出されなかった。以上の結果を受けて、NOS-1::GFPを主に頭部神経群で発現を誘導するche-2プロモーターを用いてnhl-2;nos-1二重変異体にて発現させたところ、貧栄養条件下における神経前駆細胞の異常活性化を示す表現型が顕著に抑制された。また、酵母2ハイブリッド法をもちいた結合実験によって、NHL-2はN末端に位置するTRIMドメインを、NOS-1もN末端側のアミノ酸残基を介してお互いに相互作用することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NHL-2とNOS-1の相互作用に要する領域を決定できたこと、両タンパク質の機能する組織を大まかに絞り込めたことから概ね研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
上述したタグ付加したNHL-2やNOS-1タンパク質を活用して、生体内での両タンパク質の相互作用を免疫沈降法にて調べる。また、両者の相互作用が栄養の貧富によって変化するかも調べる。DNAマイクロアレイ解析によって貧栄養条件下で野生型と比較してnhl-2;nos-1二重変異体で顕著に転写産物の発現量が増加する遺伝子群もすでに複数同定している。これらの遺伝子群の中に、NHL-2/NOS-1タンパク質複合体の標的が含まれている可能性がある。今後、これらの因子群の神経前駆細胞活性化への寄与を主に遺伝学的解析によって、これらの因子群をコードするmRNAとNHL-2/NOS-1タンパク質複合体との相互作用を生化学的解析によって検討する
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝学的解析や発現解析、酵母2ハイブリッド法を用いた相互作用解析が予想以上に効率よく進展したため。
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次年度使用額の使用計画 |
nhl-2やnos-1などの抗体作成などのために人件費・謝金に2,400,000円(400,000円X6ヶ月)、分子生物学実験用の試薬の購入に333,110円を使用する予定である。
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