研究実績の概要 |
αKlothoは主に腎臓で発現し、カルシウムやリン、ビタミンDの調節に重要なタンパク質であり、また、その欠損により骨粗鬆症や動脈硬化などの人の老化症状と類似した症状を示すことが知られている。αKlothoはC末側に膜貫通領域と短い細胞質領域をもつ分子量約130 kDaのI型膜タンパク質で、βグルコシダーゼに相同性を持つKL1, KL2のドメインを持つ。しかし、糖分解活性に必要とされるグルタミン酸が保存されていないことから、糖認識レクチンとして機能する可能性が示されている。そこで本研究ではαKlothoの機能発現機構について、腎臓やFGF23に見られる特徴的な糖鎖との関係を中心に解析を行い、以下の結果を得た。
1)αKlothoの機能発現の場である腎臓には、非硫酸化型HNK-1糖鎖(糖鎖末端にグルクロン酸を持つ)が発現している。α-Klothoマウスでは、腎臓における非硫酸化型HNK-1 糖鎖の発現が増加すること、また、自然老化マウスにおいても同様に非硫酸化型HNK-1 糖鎖の発現が増加することがわかった。さらに腎臓の機能障害を引き起こす処理(ストレプトゾトシン誘導性腎機能障害)を行ったところ、腎臓における非硫酸化型HNK-1 糖鎖の発現が増加することがわかった。
2)αKlothoのレクチン活性を確かめるためにαKlothoの膜貫通領域を免疫グロブリンのFc領域で置換した分泌型αKlotho (sKL-Fc)を培養細胞に発現させ、その培養上清から精製し、マウスの腎臓切片に反応させた。その結果、野生型マウス腎臓切片において強い反応性が見られた。一方、腎臓での非硫酸化型HNK-1糖鎖を欠損するマウス(GlcAT-S遺伝子欠損マウス)では、その反応性が著しく減少することが明らかとなった。
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