研究課題
ラマンスペクトルの分布を多項式フィットすることによる背景雑音および自家蛍光を除去する従来法に対して、高次元スペクトル空間上にスペクトル間距離(Kantorovich測度を採用)を導入し、スペクトル分類の際の次元選択の恣意性を排除し、情報理論における速度歪み理論によるファジー学習を展開した。この手法は、与えられたシグナル/ノイズ比の下で、スペクトルがどの細胞状態に属するかの帰属確率を評価し、どれくらいの精度で分類できるかを判定することができる。具体的には、通常、用いられている細胞や細胞核の形の異常性から細胞病理診断が困難とされる甲状腺濾胞癌に応用し、1細胞全体の平均スペクトルに加えて、細胞内の場所の情報を加えたラマンスペクトルデータを活用し、核領域、細胞質、ミトコンドリア等のオルガネラのどの領域のラマンスペクトル分布が癌/非癌の細胞状態の同定に有用であるかを系統的に解析し、その有用性と組織依存性を明らかにした。ラマンスペクトルの分布を多項式フィットの従来法に対し、多項式オーダー選択の恣意性をできるだけ排除する方法論を考案した。通常、多項式フィットのオーダーはユーザー側で選択する。また、ラマン分光画像の特異値分解による雑音除去法においても、特異値の総数をユーザー側で選択するため、その恣意性が指摘されている。そこで、多項式フィットに替わる方法として、背景ノイズを除去する方法ならびに特異値分解における特異値選択の恣意性を取り除くアルゴリズムが望まれている。今回は、ラマン分光画像が細胞の“構造”を反映するか否かを統計検定するために、画像データをシャッフルすることにより、画像データを“非構造化”し、非構造化された画像データ集合がつくる分布と実画像データの差を評価することで、有意判定する統計処理法を開発した。
2: おおむね順調に進展している
28年度は当該研究代表者が主宰する研究室の助教、准教授が異動/昇進したため、当初計画の一時停滞が余儀なくされたが、平成29年4月に後任スタッフが着任したため、今後加速するべく研究展開する。
Information bottleneck法に基づいて、細胞内部で刺激に対して変化しやすい部位や細胞集団のなかで細胞状態変動の大きいものとそうでないものを分類するアルゴリズムを考案し、細胞の役割分化を考察する。細胞性粘菌の離合集散ダイナミクスの微分干渉顕微ムービーから、離合集散を誘発するリーダー細胞の出現ダイナミクスを力学系理論分野で開発された渦度、ラグランジュ協同構造に基づいて解析し、カルシウムイオン伝搬に誘起される細胞集団のダイナミクスの定量化を試みる。
当該年度に、ワークショップを企画する予定であったが、研究室のスタッフが2名とも異動・昇進し、種々の業務が集中したため、計画を変更して次年度に開催することとしたため、未使用額が生じた。
ワークショップの開催にその経費を充てる予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 7件、 招待講演 6件) 図書 (1件) 備考 (4件)
生物物理
巻: 56 ページ: 197-197
10.2142/biophys.56.197
Developmental Cell
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