研究課題/領域番号 |
16K14708
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
武田 修一 名古屋大学, 理学研究科, 研究員 (50509081)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 構造生物学 / アクチン / X線結晶構造解析 / フラグミン / ゲルゾリン |
研究実績の概要 |
アクチンは、ATP結合クレフトをはさむ二つの大きなドメインからなる。らせん状のアクチン繊維の形成時にはドメインが回転し、捻れの少ない平板化したF型アクチン構造をとる(Oda, Nature, 2009)。近年の電子顕微鏡技術の発展によって、3.7オングストローム分解能のADPアクチン繊維構造が明らかとなり、繊維中のアクチン分子間の相互作用様式がわかってきた(von der Ecken, Nature, 2015)。しかし、重合に伴うATP加水分解機構や、なぜADP繊維はATP繊維よりも不安定で脱重合しやすいのか、といったアクチンの基本的な特性の理解には至っていない。このためには、F型アクチンの構造を、異なるヌクレオチド状態で、なおかつ水分子やカチオンなどのリガンド位置を確定できるレベルの高分解能で決定することが必須である。本研究課題では、ゲルゾリンファミリータンパク質をアクチン縦ダイマー安定化テンプレートとして利用する新たな系を用いることで、異なるヌクレオチド状態のF型アクチン結晶構造を、リガンド結合部位まで識別できる2.0オングストローム以上の高分解能で決定する。さらに構造情報に基づいた各種生化学実験をおこなう。得られた結果から、重合に伴うATP加水分解、それに伴う繊維構造の不安定化などのアクチンダイナミックスの基本原理、及びゲルゾリンファミリータンパク質の繊維切断機構を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、ゲルゾリンファミリータンパク質の一種であるフラグミンと、アクチン2分子の複合体の結晶構造を、2.3オングストローム分解能で決定することに成功している。この構造から、アクチンの基本的性質について重要な知見が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
水分子等のリガンドの結合様式を判別するためには、さらに高分解能のF型アクチンの原子構造が必要である。このため、平成29年度は、2.0オングストローム以上の分解能のF型アクチンの結晶構造の決定を目指す。さらに構造情報に基づいた生化学実験を行うことで、ATPaseなどのアクチンの基本メカニズム、及びゲルゾリンファミリータンパク質の繊維切断機構の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が予想より順調に進んだため、必要試薬の購入費が予定額を下回った。また、当初の計画より、学会発表の回数が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
より高分解能結晶を得るための結晶化試薬の購入、及び学会発表用の旅費に充てる。
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