研究課題/領域番号 |
16K14711
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 春木 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (80134485)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 理論生物学 / バイオインフォマティクス / 蛋白質相互作用 / 分子シミュレーション / 天然変性 |
研究実績の概要 |
天然変性領域(IDR)において、特に翻訳後修飾された側鎖を持つIDRを、観測されたIDR情報を整理した複数のデータベースIDEAL(http://idp1.force.cs.is.nagoya-u.ac.jp/IDEAL/)から抽出し、蛋白質間相互作用に関連すると考えられるものを原論文にもあたりながら考察した。その結果、リン酸化された複数のIDR中の短いペプチド・フラグメントが結合する14-3-3ε蛋白質(YWHAE)と、そのペプチド・フラグメントの一つとしてヒトMyeloid leukemia factor 1(MLF1)の8残基のペプチド・フラグメント(RSF(pS)EPFG)を研究対象として選択し、複合体構造の構造サンプリングを行った。計算には、反応座標として14-3-3ε蛋白質の重心とペプチド・フラグメントの重心の間の距離を考え、新たに開発したVcMD(virtual-system coupled canonical MD)を用い、独自のプログラムmyPresto/omegageneにより東工大のTSUBAME 2.5上のGPGPUシステムを利用して計算を行って複合体形成に伴う自由エネルギー地形を描いた。その結果、リン酸化セリンと14-3-3ε蛋白質との結合が最も強い一方、結合/解離の途中でペプチド・フラグメント側の芳香族側鎖の14-3-3ε蛋白質との相互作用が重要な働きをしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
McMD法においては、受容体側の蛋白質が高温域でのサンプリングにおいて構造を壊す可能性があり、それを防ぐために人為的な距離拘束を加える必要がある。そのような拘束を入れずに高効率の構造探索を行うため、常温で計算が可能な新しいアルゴリズムであるVcMD法を、最近、連携研究者の肥後順一特任教授(阪大蛋白研)と考案した。この手法の適用により、14-3-3ε蛋白質側には全く人為的な拘束を加えずに、ペプチド・フラグメントの結合/解離に伴う構造探索が実施できている。
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今後の研究の推進方策 |
リン酸化されていない場合の構造探索を実施して同様の計算を行い、その場合の複合体形成についても解析を行う。こうして、リン酸化によるマルチステリーの変化を解析する。さらに統合失調症病態に関与することが知られている Nuclear Distribution E Homolog 1 (NDE1)のリン酸化されたIDRフラグメントも14-3-3ε蛋白質に結合することから、この複合体構造の推定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
「その他」の費目として予定していた計算機使用料金が、平成28年度は大阪大学サイバーメディアセンターの大型計算機利用料として比較的安価な金額で利用ができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に翌年度分として請求した助成金は、成果発表のための海外旅費として利用する計画である。
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