研究課題
蛋白質の天然変性領域(IDR)において、特に翻訳後修飾された側鎖を持つIDRを、観測されたIDR情報を整理したデータベースIDEALから抽出し、蛋白質間相互作用に関連すると考えられるものを原論文にもあたりながら考察した。本研究では、1) 転写因子Ets1の天然変性領域の2つのSer残基のEts1コアドメインのDNA結合領域の相互作用と、2) ヒトMyeloid leukemia factor 1(MLF1)の天然変性領域にある8残基のペプチド・フラグメントと14-3-3ε蛋白質(YWHAE)との相互作用について、リン酸化状態と非リン酸化状態の双方に対する構造サンプリング計算とその結果の解析を行った。1) Ets1のIDR(Arg279 からPro300)と、DNA結合を行うLys301からGlu441によるコアドメインとの構造サンプリング計算(マルチカノニカル分子動力学法: McMD)の結果による複合体形成を詳細に解析した。その結果、Ser282とSer285が両方ともリン酸化された状態とリン酸化されない状態とでは、それらの自由エネルギー地形が大きく異なり、前者ではDNA結合を強く阻害する特異的構造となる一方、後者では多様な複合体となることを見出した。2) 14-3-3ε蛋白質とIDRである8残基のペプチド・フラグメント(RSF(pS)EPFG)の複合体構造の構造サンプリングを、新たに開発したVcMD(virtual-system coupled canonical MD)アルゴリズムを搭載した独自のプログラムmyPresto/omegageneにより、東工大のTSUBAME 3.0上のGPGPUシステムを利用して計算を行い、複合体形成に伴う自由エネルギー地形を描き解析した。その結果、リン酸化により複合体構造が非リン酸化状態よりも極めて強く安定化することを見出した。
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