研究課題/領域番号 |
16K14712
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石川 春人 大阪大学, 理学研究科, 講師 (40551338)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | バイオイメージング / 蛍光エネルギー移動 / 酸素 / ヘム |
研究実績の概要 |
酸素は生体内においてエネルギー産生のみならず、低酸素環境への応答であるシグナル伝達など様々な役割を果たしている。この酸素による制御や影響を検討するためには、酸素濃度の変化を可視化するプローブ分子の開発が重要である。これまで、金属錯体を基盤としたイメージングプローブ分子の開発が行われているが、タンパク質を基盤とした実用性の高いイメージングプローブの報告はなかった。本研究はヤツメウナギヘモグロビン(slHb)が酸素濃度依存的なモノマー/ダイマー平衡を示すことに着目し、タンパク質を基盤とした酸素濃度依存的FRETシグナルを検出可能なイメージングプローブタンパク質を創製することを目指している。昨年、酸素依存的なユビキチンープロテアソーム系によるタンパク質分解を利用したイメージングプローブの報告があったが、FRETを基盤とした本研究とは異なるアプローチであり、酸素濃度依存的にFRETシグナルがON/OFF可能な本研究は依然有用であると考えられる。 これまでslHbによるFRET系の検討を進めてきたが、実際に測定可能なサンプルを調整するまでは至っていない。しかし、ミオグロビン(Mb)に蛍光タンパク質を融合し、酸素濃度依存的に蛍光シグナル強度が変化する新規反応系の構築に成功した。Mbに特定の蛍光タンパク質を融合した場合、酸素濃度に応答して蛍光シグナル強度の減少が観測され、イメージングプローブとして利用可能であることが明らかとなった。現在、融合する蛍光タンパク質の最適化を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2つのヤツメウナギヘモグロビン(slHb)をペプチドリンカーでつなぎ、その両端にGreen Fluorescent Protein (GFP) / Kusabira-Oragne (KO)の組み合わせか、Cyan Fluorescent Protein (CFP) / Yellow Fluorescent Protein (YFP)の組み合わせの蛍光タンパク質を融合することで、酸素濃度依存的なslHbの会合に伴う蛍光タンパク質間のFRETの観測を目指している。有機化合物による蛍光ラベルを用いた予備実験は終了しているが、前述の融合タンパク質のDNAコンストラクト作成に想定以上に時間がかかり、蛍光タンパク質による酸素依存的なFRET測定には至っていない。 一方で、slHbを用いた系と並行して検討してきた、よりシンプルな酸素濃度イメージング系であるミオグロビン(Mb)を基盤とした測定系の樹立に成功した。これはMbの吸収スペクトルが酸素結合形と酸素非結合形で変化することを利用したものである。Mbの吸収スペクトルと蛍光タンパク質の蛍光スペクトルがオーバラップした場合、エネルギー移動が起こり蛍光強度が減少することが期待できる。そこでMbと蛍光タンパク質を融合し、酸素濃度依存的なMbの吸収スペクトル変化が蛍光スペクトルに与える影響を検討したところ、酸素の結合に伴い蛍光タンパク質からのエネルギー移動効率が増加し、蛍光強度が減少することが確認された。
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今後の研究の推進方策 |
ヤツメウナギヘモグロビン(slHb)をペプチドリンカーでつなぎ、その両端にGreen Fluorescent Protein (GFP) / Kusabira-Oragne (KO)の組み合わせか、Cyan Fluorescent Protein (CFP) / Yellow Fluorescent Protein (YFP)の組み合わせの蛍光タンパク質を融合するFRET観測系については引き続き実験を継続する。早い段階で融合タンパク質の精製を完了し、酸素濃度依存的なFRET観測まで行うことを目指す。また細胞系への導入に関しても検討を行う。 新たに構築することに成功したミオグロビン(Mb)を用いた酸素濃度イメージングの系についても並行して実験を行う。Mbの系においては、ミオグロビンの吸収スペクトルと蛍光タンパク質の蛍光スペクトルのオーバラップがエネルギー移動効率に強く影響するため、様々な種類の蛍光タンパク質をMbに融合し、酸素濃度依存的な蛍光シグナルの測定を行う。こちらの系についても、精製タンパク質での検討が終了した段階で細胞系への導入を試み、実際に細胞内における酸素濃度変化の検出を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室で以前購入していた試薬などを有効利用することで研究を推進することができたため、消耗品の使用量を抑えることが可能となった。しかし、それら試薬はほぼ消費したので、未使用分を次年度の研究費として活用する。
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次年度使用額の使用計画 |
研究室で以前購入していた試薬はすでにほぼ使い切ったため、次年度においては新たに試薬を購入する必要がある。また研究の進行に伴い必要な試薬や物品が増えたため、今回生じた次年度使用額を必要な試薬などの消耗品及び物品費として利用する。
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