研究実績の概要 |
28年度は主に以下の4つの課題に取り組み、それぞれ成果をえることができた。 ①ミオシンの圧電アロステリー(Ohunuki, Sato, and Takano, Phys Rev E, 2016)を可能にする分子内の物理的特性をクーロン結合ネットワークの観点から解析した。これまで我々のグループで明らかにされた臨界パーコレーション性(Morita and Takano Phys Rev E 2009)がクーロン結合ネットワークにも見られることを分かった。さらに、ネットワークと特徴付ける媒介中心性が高いノードがクーロン結合ネットワークの要所になっていることを見いだした(論文投稿準備中)。 ②圧電アロステリーの普遍性を示すため、アクチンフィラメントに張力を負荷した分子動力学シミュレーションを実行し、フィラメントの圧電応答を解析した(国際会議で口頭発表・ポスター発表済。論文投稿準備中)。分子動力学シミュレーションの高速化のためaMD法を導入した。 ③高速MD計算計算を可能にるGenralized Bornモデルにおいて、分子間結合にともなう静電自己エネルギー変化(脱水和ペナルティー)の過大評価の問題が明らかになったので、その原因を物理的に究明し、結合にともなう自己エネルギー変化の過大評価を是正する方法を提唱した(Mizuhara, Parkin, Umazawa, Ohnuki, and Takano, J Phys Chem B, 2017)。 ④アクチン重合のリエントラント性(非単調な塩濃度依存性)の解明のため、Generalized Bornモデルを用いてフィラメント内の静電相互作用を解析し、大域斥力と局所引力の競合を明らかにした(論文投稿中)。
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