研究実績の概要 |
29年度は以下の課題に取り組み、それぞれ成果を得ることができた。 (1)「圧電アロステリー」と密接な関係にある「誘電アロステリー」の研究を進めた。これまでの研究でミオシンのアクチン結合領域にATP結合によって駆動される誘電アロステリーが見出されていたが(Sato, Ohnuki, Takano, J. Phys. Chem., 2016)、これと同じATP結合駆動の誘電アロステリーがミオシンのコンバータードメインのにも見られることを明らかにした(Sato, Ohnuki, Takano, J. Chem. Phys. 2017)。さらにこの誘電アロステリーによってレバーアーム部位のリカバリーストロークが駆動されることが分かった。また、分子機能が全く異なる蛋白質(リバースジャイレースおよびcytochrome P450還元酵素)においても誘電アロステリーが分子機能に関与していることが分かってきた。 (2)昨年度に引き続き、アクチンフィラメントに張力を付加したMD計算を行い、表面静電ポテンシャルの変化から圧電アロステリーの解析を行った。さらにアクチンフィラメントの圧電アロステリー(張力印加による表面静電ポテンシャルの変化)がアクチン結合タンパク質との相互作用に与える影響についても研究を進めた(生物物理学会のシンポジウムで発表、論文投稿準備中)。 (3)タンパク質の圧電アロステリーおよび誘電アロステリーは分子間のクーロン相互作用に変化をもたらすものであるため、分子間クーロン相互作用に影響をおよぼすタンパク質周囲の水の物性(特に誘電率と圧縮率)を解析した(論文投稿準備中)。
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