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2016 年度 実施状況報告書

ミトコンドリアゲノム変異の病原性発揮における細胞種特異的な感受・抑制機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K14719
研究機関筑波大学

研究代表者

中田 和人  筑波大学, 生命環境系, 教授 (80323244)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワードミトコンドリア / ミトコンドリアゲノム / 細胞分化 / エネルギー代謝 / 突然変異 / 骨格筋 / モデルマウス
研究実績の概要

本研究では、速筋は欠失型mtDNAの蓄積を許容でき、逆に遅筋はその病原性によってエネルギー産生異常が誘導されるという、「変異型mtDNAの蓄積に対する細胞種間の感受性の差異」の原因究明を通して、変異型mtDNAの蓄積を許容できる分子基盤を治療戦略に演繹させることを目指している。今年度は、解糖系に依存する速筋は欠失型mtDNAの蓄積によるミトコンドリアエネルギー低下に耐性を示し、逆に、ミトコンドリアでのエネルギー産生に依存する遅筋は欠失型mtDNAの蓄積に感受性を示すことを、多様な骨格筋組織の解析を通して明確にすることができた。このような変異型mtDNAの蓄積に対する速筋と遅筋における差異を生じさせる機構として、インスリンシグナルの感受に着想して解析を進めたところ、速筋では欠失型mtDNAの蓄積とともにGULT4の局在が細胞膜直下に集積する傾向が顕著になるが、遅筋ではそれが不変であることが分かった。そこで、細胞内のインスリンシグナルを阻害することで糖の取り込みを低下させるWortmanninを欠失型mtDNAを含有するマウスに長期投与したところ、これまでは欠失型mtDNAの蓄積に抵抗性を示していた速筋組織(速筋繊維)が感受性を示し、ミトコンドリア呼吸機能の低下と赤色ぼろ繊維(Ragged-red fiber)化が観察された。これらの結果は、骨格筋細胞のインスリンシグナルの強度が欠失型mtDNAの蓄積に対する感受性/抵抗性を制御していることを示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今年度実績として、欠失型mtDNAの蓄積による病原性発揮が速筋と遅筋で明らかに異なる原因として掲げた、解糖系に依存する速筋は欠失型mtDNAの蓄積によるミトコンドリアエネルギー低下に耐性を示し、逆に、ミトコンドリアでのエネルギー産生に依存する遅筋は欠失型mtDNAの蓄積に感受性を示すという、2つの作業仮説の検証に成功し、さらに、インスリンシグナルの強度がこの変異型mtDNAの蓄積に対する細胞種間の感受性の差異を制御している可能性をマウス個体を用いて示唆することができた。これらのことから、本研究は「おおむね順調に進展している」と自己評価した。

今後の研究の推進方策

これまでの解析において、欠失型mtDNAの蓄積によって一部の速筋線維が遅筋化する可能性を示唆する結果を得ている。しかし、2種の速筋線維(Type IIa 線維とType IIb線維)のうちどちらの速筋線維が遅筋化するかは明確になっていない。そこで、Type IIa 線維とType IIb線維のうち、どちらの速筋線維が分化転換するかを多種の筋組織を用いて明らかにしたい。また、筋線維は分化や再生過程において胚型―新生児型―成体型と筋タンパク質のアイソフォーム発現を変化させることが知られているため、欠失型mtDNAの蓄積によって誘導される筋線維型の分化転換でも同様の分化運命を繰り返すのか、否かを検証したい。すなわち、これらの基礎生物学的な解析視点からミトコンドリア原性の筋線維型転換の基本機構を解明したい。さらに、Wortmanin投与の欠失型導入mtDNAマウスにおいて得た骨格筋組織での筋線維型転換を解析する。これらのサンプルでは速筋線維での病原性が増強しているため、遅筋型への分化転換が起こる可能性がある。これたらの解析を通して、ミトコンドリア異常を起点とした細胞分化表現型の調節機構の提案を行いたい。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2016 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] A novel mutation in TAZ causes mitochondrial respiratory chain disorder without cardiomyopathy2016

    • 著者名/発表者名
      Borna NN, Kishita Y, Ishikawa K, Nakada K, Hayashi JI, Tokuzawa Y, Kohda M, Nyuzuki H, Yamashita-Sugahara Y, Nasu T, Takeda A, Murayama K, Ohtake A, Okazaki Y
    • 雑誌名

      J Hum Genet

      巻: 62 ページ: 539-547

    • DOI

      10.1038/jhg.2016.165

    • 査読あり
  • [雑誌論文] FGF21 is a biomarker for mitochondrial translation and mtDNA maintenance disorders2016

    • 著者名/発表者名
      Lehtonen JM, et al.(Nakada Kは24名中22番目の著者)
    • 雑誌名

      Neurology

      巻: 87 ページ: 2290-2299

    • DOI

      10.1212/WNL.0000000000003374

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Mitochonic Acid 5 Binds Mitochondria and Ameliorates Renal Tubular and Cardiac Myocyte Damage2016

    • 著者名/発表者名
      Suzuki T, at al.(Nakada Kは41名中36番目の著者)
    • 雑誌名

      J Am Soc Nephrol

      巻: 27 ページ: 1925-1932

    • DOI

      10.1681/ASN.2015060623

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 突然変異型ミトコンドリアゲノムを含有するモデルマウス2016

    • 著者名/発表者名
      小笠原絵美、中田和人
    • 雑誌名

      医学のあゆみ

      巻: 260 ページ: 73-79

    • 査読あり
  • [学会発表] 変異型ミトコンドリアゲノムによる多階層病理2016

    • 著者名/発表者名
      中田和人
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県・横浜市)
    • 年月日
      2016-12-02
    • 招待講演
  • [学会発表] ミトコンドリアセントラルドグマの破綻病理2016

    • 著者名/発表者名
      中田和人
    • 学会等名
      第16回日本抗加齢医学会総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県・横浜市)
    • 年月日
      2016-06-11
    • 招待講演
  • [備考] 筑波大学生命環境系 中田ー石川研究室

    • URL

      http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~jih-kzt/

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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