研究課題
本研究では、速筋は欠失型mtDNAの蓄積を許容でき、逆に遅筋はその病原性によってエネルギー産生異常が誘導されるという、相反する生体現象である「変異型mtDNAの蓄積に対する細胞種間の感受性の差異」の原因究明を通して、変異型mtDNAの蓄積を許容できる分子基盤を把握することを目指している。欠失型mtDNAを導入したモデルマウスの骨格筋組織の詳細解析から、細胞質に存在するglucose transporter 4(GLUT4)の筋細胞膜直下への移動と蓄積が欠失型mtDNAに対する抵抗性ならびに感受性と相関することを見出した。欠失型mtDNAを80%以上含有する骨格筋組織(繊維)において、slow oxidative type 1 と fast oxido-glycolytic type 2A/2X繊維ではミトコンドリア呼吸機能異常が誘導されるが、fast glycolytic type 2B 繊維ではGULT4の筋細胞膜直下への移動と蓄積が顕著に観察され、ミトコンドリア呼吸機能が維持されていた。そこで、GLUT4の筋細胞膜直下への移動と蓄積を阻害したところ、fast glycolytic type 2B 繊維のミトコンドリア呼吸機能が低下し、一部の筋繊維がミトコンドリア病に典型的な赤色ぼろ繊維の表現型を呈するようになることを見出した。これらの結果は、GULT4を介したインスリンシグナル変異型mtDNAの病原性制御に重要な役割を果たしていることを示唆している。これまで、変異型mtDNA分子種による多様な病型誘導は、1)変異種による相違、2)変異型mtDNA分子の臓器間局在と動態の相違、という2つの階層によって説明されている。本研究の成果は、変異型mtDNAの蓄積に対する細胞種間の感受性の差異のよる病型誘導・抑制機構の存在という新たな病理階層を提案するものである。
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Scientific Reports
巻: 8 ページ: 425
10.1038/s41598-017-18828-3
巻: 7 ページ: 5379
10.1038/s41598-017-05808-w
http://www.biol.tsukuba.ac.jp/~jih-kzt/