研究課題
オートファゴソームの生化学的単離のため、STX17ドミナントネガティブ変異体(GFP-STX17dNTR)のDOX誘導細胞(論文revise中)にFLAG-Strep-LC3を安定発現させた。DOX添加により、GFP-STX17dNTRの発現が誘導され、GFP-STX17dNTRおよびFLAG-Strep-LC3の二重陽性のオートファゴソームが顕著に蓄積することを確認した。オートファゴソームを高効率・高純度に精製する方法として、二種類のタグを用いた二段階精製を行った。anti-FLAGビーズを用いて一段階目の精製を行い、FLAGペプチドで溶出した後、anti-GFPビーズを用いて二段階目の精製を行った。二段階精製後、ビオチン化試薬を用いて化学的修飾を行い、可溶化後、streptavidinビーズを用いた精製を行った。しかし、ここで得られた精製標品の質量分析ではオートファゴソーム外膜因子の候補は得られなかった。この二段階精製ではオートファゴソームマーカー因子の濃縮は見られるものの、オートファゴソーム以外のオルガネラの混入も見られたため、精製方法を変更することとした。小径磁性ビーズを用いた二段階精製では、オートファゴソーム以外のオルガネラが小径磁性ビーズに吸着する可能性が考えられたため、OptiPrep密度勾配遠心を用いたフローテーションにより、オートファゴソームと他のオルガネラの分離を試みた。結果、オートファゴソームはOptiPrepのステップ勾配中の低密度の界面に濃縮され、ERやミトコンドリアなど他の多くのオルガネラと分離されることが見出された。このフローテーションによるオートファゴソームの単離に、タグを用いた精製を組み合わせたところ、オートファゴソームが高効率に濃縮されていることを確認した。現在、質量分析によるオートファゴソーム外膜因子候補の同定を行っている。
3: やや遅れている
当初計画していた二段階精製を行ったが、結果として精製標品中のオートファゴソームの純度や量が不十分であったため、実験計画に遅れが出ていた。そこでリカバリーのため、別の精製方法(濃縮方法)を新たに考案し、タグによる精製の前にOptiPrep密度勾配を用いたフローテーションを行うことで、他のオルガネラの混入を少なくすることに成功した。当初の実験計画から「やや遅れている」が別方法でリカバリーすることで実験計画の遅れは最小限にとどめている。
当初の実験計画からやや遅れているが、現在、精製標品の質量分析を行っており、これによるオートファゴソーム外膜因子候補の同定までが前年度の計画である。今後は、計画書に記載した通り、質量分析により同定したオートファゴソーム外膜因子候補について機能および細胞内局在の解析を行う。各因子についてCRISPR技術による遺伝子ノックアウト細胞の作製を行い、オートファゴソーム形成過程やリソソームとの融合過程にどのような影響が見られるか生化学的解析および形態学的解析を行う。形態観察はDeltaVision高解像度イメージングシステムを用いた蛍光顕微鏡解析および電子顕微鏡解析を行う。また、並行して、既存方法を応用して選択的オートファジー活性および非選択的オートファジー活性への影響の違いを分けて調べる。また、候補因子の相互作用相手を免疫沈降法などによって解析する。
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The EMBO Journal
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.15252/embj.201695189
Developmental Cell
巻: 38 ページ: 86-99
10.1016/j.devcel.2016.06.015