研究実績の概要 |
項目I-1「細胞膜の形状変化と膜裏打ちタンパク質の局在動態との関係解明」:クラスリン依存的エンドサイトーシスに関与すると考えられているタンパク質群(amphiphysin1, Arp2, BIN1, cortactin, GAK, Hip1R, N-WASP, SNX9, clathrin, actin)の局在・集積を、蛍光経時観察する系を構築し、そのいくつかに関しては、高速AFMとの同時観察に成功している。また、機能阻害剤を用いた実験からは、エンドサイトーシスには、formin やArp2/3複合体などのアクチン関連タンパク質の関与が示された。細胞表層におけるアクチンの重合・脱重合のダイナミクスに関して解析したところ、forminやArp2/3には非依存的であった。このことは、クラスリンピット周辺では、周囲の表層アクチンとは異なる制御機構でアクチンの重合が進行し、膜の変形を引き起こしていることを示す。 項目Ⅱ-1「小胞切り離し過程に関与するタンパク質の局在と膜形状変化の関係解明」:小胞の切り離しで主要な役割を果たしているダイナミンに関して、RNA干渉で発現量を低下させた細胞を用いてAFM観察を行った。時間分解能を従来の10秒から2秒に上げたイメージングでは、ピットが2段階の過程を経て閉じる様子が観察された。ダイナミンの発現量低下により、1段階目から2段階目への移行時間に遅れが生じた。このことは、閉口過程前半のステップはダイナミン非依存的に進行すること、および、膜を最終的に括り切るステップでダイナミンの積極的な関与があることを示唆する。 項目Ⅲ「AFM 形状像に対する膜力学モデルの適用法の確立」:連携研究者の安達らと共にモデルについて検討し、膜の連続体モデルを用いてAFMイメージの解析をおこなうことの妥当性などを議論した。現在、解析プログラムの作成に着手している。
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