研究実績の概要 |
項目I:Ⅰ-1に関しては、昨年度に引き続き、クラスリン以外のエンドサイトーシス関連タンパク質の局在観察に取り組んだ。Ⅱ-2に関しては、リガンドとしてトランスフェリンを用いて、受容体の取り込み量と細胞全体でのエンドサイトーシス頻度との関係を明らかにした。蛍光リガンドを用いた定量実験では、受容体の細胞内取り込みが増加したのに対して、細胞表面でのエンドサイトーシス頻度に大きな変化はなかった。このことは、リガンドと受容体の結合自体がエンドサイトーシスの頻度を顕著に増加させることはないことを意味する。
項目Ⅱ:昨年に引き続き、クラスリン依存的エンドサイトーシスの最後に膜が切り離される過程の分子機構を明らかにする試みを行った。siRNAを用いて、ダイナミンをノックダウンしたところ、i) 膜隆起を伴う閉口頻度の減少、ii) 二段階閉口頻度の増加、iii)開口時間の延長、が見られた。また、阻害剤を用いてアクチン動態の関与を調べたところ、i)脱重合阻害による開口頻度の低下, ii)開口時間の延伸, iii)膜隆起を伴う閉口頻度の減少 ,iv)再開口の減少 などの顕著な効果が多く見られた。これらの結果は、ダイナミンに加え、アクチンが膜の動態変化に深く関与していることを示す新しい知見である。
項目Ⅲ:膜閉口過程で見られた膜隆起に着目し、膜の形状を平面モデルに当てはめる試みを行った。今年度は、これまで以上に時間分解能の高い(フレーム2秒)動画を用いて、詳細な膜の形状情報を抽出した。ピットの片側から覆い被さるように隆起がフタをすると考えられてきたが、時間分解能の改善により、膜隆起がピットの周囲を取囲うようにして動く様子を捉えることに成功した。これらの観察結果から、アクチンの重合モデルと膜の連続体モデルとを組み合わせ、アクチンの局所的な重合が膜隆起とピット閉口を引き起こす仕組みを解明中である。
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