研究課題/領域番号 |
16K14724
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
久堀 智子 大阪大学, 微生物病研究所, 特任講師(常勤) (20397657)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ユビキチン / ゼノファジー / 脂質結合 / 液胞 / 病原細菌 |
研究実績の概要 |
感染細胞内に侵入する病原細菌の多くは、細菌を内包する液胞を構築しその中で増殖を達成する。この液胞には通常ユビキチンの集積が認められ、宿主細胞はユビキチンを指標としてオートファジーなどの細菌排除のための免疫系を駆動する。病原細菌レジオネラおよびサルモネラを用いた液胞へのユビキチンの集積の解析から、申請者らはユビキチンが液胞の脂質に直接結合している可能性を見出した。これまでタンパク質のみがユビキチン修飾反応の対象と考えられてきたが、脂質分子がユビキチン修飾を受けるかどうかを検証することで、宿主細胞の細菌認識機構のみならず、ユビキチン反応系の基本原理に対しての新たな概念を提起することを目的として本研究課題を推進している。 今年度は、脂質であるトランスフェクション試薬でコートされたラテックスビーズを細胞に導入することで、細菌感染を模擬した実験系を立ち上げ、ビーズに集積するユビキチンを解析した。ビーズへの有意なユビキチン集積が蛍光顕微鏡観察により認められた。細胞からビーズを生化学的に単離し、電気泳動法によりユビキチンを解析した結果、何らかの修飾を示唆する移動度のシフトが見出された。また、複数の脂質分子を組み合わせたリポソームの化学合成を試み、合成リポソームと既知のレジオネラ E3 ユビキチンリガーゼおよび E1, E2 酵素を用いた in vitro の反応を行い、リポソームを回収後、ユビキチン修飾の有無を調べる実験を行ったが、現在のところ再現性のある結果はまだ得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は実験系の立ち上げと予備的な解析を行った。全く新しい実験手法を導入し、脂質でコートされたラテックスビーズへのユビキチンの集積を細胞内で確認することができた。また、リポソームの化学合成という新規の試みにも取り組んだ。しかしながら、リポソームへのユビキチン結合が再現性良く検出できるに至らなかったため、その後に計画していた解析に遅れが生じた。細菌感染を模擬したラテックスビーズによる実験系も新たな試みであったため、軌道に乗せるまでに時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
リポソームの化学合成については、細菌感染時の液胞形成に近いものを目指して、組み合わせる脂質の種類を多種検討する必要があると考えている。必要に応じて、専門的な知識を持つ研究者との議論を進め、可能性を模索したいと考える。仮説が正しければ、脂質にユビキチンを結合する酵素の同定が鍵になると考える。そのため、合成リポソームを細胞抽出液と反応させる実験を行い、リポソームを単離して反応に関わる細胞内タンパク質あるいは細菌タンパク質の同定を試みる。候補タンパク質が同定されれば、合成リポソームを用いた in vitro 反応系で酵素活性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室の他研究機関への移転が決まっていたため、実験計画に遅れが生じ、計画していた実験のための試薬類の購入などを見合わせた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に持ち越した実験計画分の試薬類の購入を次年度使用額として計上する。
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