研究課題/領域番号 |
16K14727
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
原 裕貴 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教(テニュアトラック) (80767913)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 核サイズ / サイズ生物学 / 無細胞再構成系 |
研究実績の概要 |
「核の構造的特性」の理解を本研究の目的とし、本年度は主に、核内の特徴量に着目した核のサイズの増大速度の制御機構に関する解析を進め、新規制御機構を示す実験的証拠を得ることに成功した。その一部成果に関しては、内容をまとめ研究論文として投稿するに至った。 手法に関しては、これまでに整備した実験環境において、アフリカツメガエル卵抽出液による核のin vitro無細胞再構築系を用い、核の構成材料の供給能力を改善させる実験条件を検討した。さらに、上記無細胞系で培養予定のDNA結合ビーズの調製を試みており、調製後のDNA結合ビーズより核のin vitro再構成の実験を進めている。 上記手法の整備・改善と同時に、核のin vitro無細胞再構築系、ならびにライブイメージング法を用いて、核のサイズが増大する制御機構に関する解析も進展させた。これは、核が内包する遺伝情報であるDNAの「量」が核サイズの制御に与える影響に着目したものである。核内DNAの量に実験的摂動を与えた上で、核サイズの増大速度への影響を解析することで、核内のDNA量依存的に核サイズの増大速度を制御する特徴を示すことが出来た。さらに、DNAの物理特性を制御することで、核内クロマチンの構造が核サイズを制御する新規機構を示唆する実験的証拠を得た。これは先行研究とは異なる観点からの新規の核サイズの制御機構であり、当該領域での大きなインパクトを有することが期待でき、この成果に関しては論文を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.(当初計画)卵抽出過程の改善・核の構成材料の供給能力の改善: DNAの量が核サイズの制御に影響を与えることを発見した。核の構築に最適なその他実験条件の探索を行うことは出来なかったが、DNAの量依存的な核サイズの制御機構に関して更なる解析を進め、その制御モデルの提案を行った。 2.(新規の方向性)上記成果の論文投稿:上記のDNA量依存的な核サイズ制御に関しては、研究論文として投稿を行った(現在査読中)。この制御機構の解析に加え、得られたデータを応用することで、生物種を超えた核内DNA量の役割を比較解析し考察することが出来た。この成果に関しても、別の論文として投稿を行った(現在査読中)。 3.(当初計画)DNAビーズ核の改良:既知の手法を基にDNA結合ビーズの作製を試み、予備的な実験結果ではあるがDNA結合ビーズの作製に成功、さらに再構築した核をより効果的に拡大させる条件を同定することに成功した。しかし、未だ実験条件が不安定な部分が存在し、実験結果の再現性に不安を残す。上記1の実験結果と関連する事象であることから、上記結果をフィードバックし、DNA結合ビーズからの核の再構築実験を進行させる。
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今後の研究の推進方策 |
DNAビーズ核の操作と条件検討:現状のDNA結合ビーズ作製法を応用し、ビーズに結合するDNAの量や質の操作、さらにビーズ自体の物理的特性の操作可能な実験条件の整備を行う。それと同時に、ビーズ上のDNAが操作できない場合のバックアップとして、生物由来のDNA材料の応用とそのDNA物理特性の操作、さらにビーズ以外の人工DNA材料を用いる手法についても探索する。DNA結合ビーズの操作に関しては、他目的でビーズを使用経験のある研究者からの助言を得ており、その助言を基に改良を進める。研究代表者(原)と共に、本研究の基本実験技術を既に習得した大学院生が主体となり、研究協力体制を整え研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画の「核の構成材料の供給能力の改善」に関して、DNAの量や物理的性質が核サイズを制御する新規機構の解析が大きく進展した(現在論文投稿中)。関連する成果を基に他助成金の獲得に繋がり、また研究面でも、当初計画(未完了)の「DNAビーズ核の改良」を進展させる基礎データを取得するに至った。これら得られた成果を活用・進展させるために、次年度に本経費を使用する。特に、未完了部分の「DNAビーズ核の改良」に関する物品費に充てる。
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