研究課題/領域番号 |
16K14728
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
金田 剛史 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 講師 (70301752)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 細胞骨格 / 中間径フィラメント / 植物細胞 / 細胞周期 / タバコBY-2細胞 / シロイヌナズナ / 微小管 / タイムラプス解析 |
研究実績の概要 |
植物細胞において中間径フィラメント (IF) の存在の有無は明らかではない。本研究においては、植物細胞内で細胞骨格様の線維を形成するシロイヌナズナのタンパク質をIntermediate Filament Motif Protein 1 (IFMoP1) と名付け、植物のIFタンパク質の候補と考えて解析を行っている。 IFMoP1の細胞内での動態について調べるために、緑色蛍光タンパク質GFPとIFMoP1との融合タンパク質(IFMoP1-GFP)を発現させた形質転換タバコBY-2細胞の経時的な観察を行ったところ、細胞分裂終期の細胞においては、細胞板の形成装置である隔膜形成体の発達に伴って、IFMoP1-GFPの局在が遠心的に広がって変化していく様子が観察された。さらに、微小管との局在関係の変化について調べるために、IFMoP1-GFP形質転換タバコBY-2細胞に赤色蛍光タンパク質mCherryとβ-チューブリンとの融合タンパク質(mCherry-TUB)の遺伝子を導入して発現させた二重形質転換タバコBY-2細胞を利用して詳細な観察を行った。間期の細胞では、IFMoP1-GFPが形成する線維が微小管と独立した局在を示した。また、細胞質表層付近で点状に局在するIFMoP1-GFPが、細胞質表層微小管の一部に沿って局在している様子も見られた。分裂期の細胞において経時的に観察を行うと、IFMoP1-GFPが隔膜形成体の微小管と共に遠心的に局在を変化させる様子が観察された。さらに、隔膜形成体の消失後、細胞分裂直後に至るまでIFMoP1-GFPは微小管あるいはチューブリンと共局在し、核周辺へと移動した。 IFMoP1は線維構造を形成しているときには微小管と独立した局在を示すが、線維を形成していないIFMoP1は微小管と共局在しているということがこれらの結果から明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度には、IFMoP1-GFPとmCherry-TUBを共に発現させた二重形質転換タバコBY-2細胞を用いて観察を行うことにより、生きた細胞でIFMoP1の動態や微小管との局在関係の変化について詳細に調べることができた。とくにIFMoP1が細胞分裂終期の隔膜形成体の微小管と共局在している状態から分裂直後に核周辺へと局在を変化させる様子を連続的に捉えることに成功し、十分な成果が得られた。IFMoP1が形成する線維の微細構造の解析については、線維の出現頻度の低さなどの原因により進展はなかったが、予定外の成果としては、データベース上に存在するタバコのIFMoP1ホモログについて、半定量的RT-PCRによる発現解析を試み、タバコBY-2細胞においてIFMoP1ホモログの発現量が対数増殖期の細胞と比較して定常期の細胞で低くなる傾向が見られるという結果を得た。IFMoP1-GFP形質転換タバコBY-2細胞を用いた解析では、タバコのIFMoP1ホモログの発現様式は分からないが、タバコ細胞が本来もつIFMoP1ホモログを調べることにより、タバコBY-2細胞を利用して細胞周期の進行に伴う発現様式の変化について調査するきっかけを得ることができた。全体的には順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
IFMoP1の機能は不明である。今後はIFMoP1の発現と機能の解析を主に進める必要がある。 タバコBY-2細胞のIFMoP1ホモログについて、細胞周期を同調化したタバコBY-2細胞を用いて、その発現と細胞周期との関連性について詳細な検討を行う。また、シロイヌナズナにおける発現について調べるために、IFMoP1プロモーターの下流にレポーターとしてβ-グルクロニダーゼ(GUS)の遺伝子をつないだコンストラクトを導入した形質転換シロイヌナズナを用いて、IFMoP1の発現の組織や発達段階における特異性について検討する。 また、シロイヌナズナのIFMoP1破壊株の形態を観察することにより、IFMoP1の植物体における働きを調べる。これまで、IFMoP1破壊株を栽培した様子からは、成長や形態に大きな変化は見られていないので、IFMoP1プロモーター-GUS解析の結果を参考に、IFMoP1の発現が多く見られる組織での変化に着目して観察を行う。 IFMoP1の細胞内局在からは、線維を形成していないときの微小管との関連性が示唆された。IFMoP1の欠損により細胞内に変化が見られないか、とくに微小管の変化に着目して調べることにより、IFMoP1の機能を明らかにするための解析を進める。 平成29年度に進めたIFMoP1-GFPの形質転換タバコBY-2細胞における動態観察では、IFMoP1によって構成される線維の形成過程までは見ることができなっかった。線維が形成される頻度が低いこととタイミングが限られることが原因と考えられるが、多くの細胞で観察を行い、IFMoP1線維が形成される様子を捉え、その形成過程やタイミングについての詳細を明らかにすることを目指して実験を行う。
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備考 |
優秀発表賞(口頭発表部門)受賞、中国四国植物学会第74回大会・高知、宇都宮輝、金田剛史(演者:宇都宮輝)
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