研究課題/領域番号 |
16K14729
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池ノ内 順一 九州大学, 理学研究院, 教授 (10500051)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 細胞・組織 / 上皮細胞 / 細胞接着 / FRMD4A / Cytohesin |
研究実績の概要 |
多細胞生物は進化の過程で、細胞接着機構を持つ上皮細胞を獲得することで出現した。多細胞化により、個体は大型化し、個々の細胞は様々な機能を分担することで、より生存に適した進化を遂げた。一方で、多細胞生物では、個々の細胞の増殖や分化は厳密に制御されなければならない。研究代表者は、上皮細胞における細胞接着を介した情報伝達機構を解明する上で、刺胞動物のヒドラが解析に適した実験材料になると考えて、ヒドラに対する細胞生物学的アプローチの確立を試みた。ヒドラは上皮細胞を最初に獲得した多細胞生物であり、主に外胚葉性上皮細胞と内胚葉性上皮細胞から構成される二胚葉動物である。その他にも、ヒドラには散在神経系を構成する神経細胞と間細胞(interstitial cell)が存在するが、MarcumとCampbellの確立した神経細胞および間細胞を欠損した突然変異体ヒドラ(上皮ヒドラ:J Cell Sci.29:17-33. 1978)の研究から、ヒドラは上皮細胞のみで正常に発生、増殖することが示されている。すなわち、ヒドラの形態形成や再生過程は上皮細胞同士の情報伝達によって成し遂げられている。ヒドラをモデル生物として使用するにあたり、まず外胚葉性上皮細胞と内胚葉性上皮細胞の蛍光抗体染色法の条件検討を行った。また、2010年に公開されたHydra magnipapillataのドラフトゲノムの配列情報を参考にして、相同性検索から脊椎動物に存在する既知の細胞接着関連分子のクローニングを試みた。当研究室に於いて同定した脊椎動物の細胞間接着形成に関わる分子FERM Domain Containing 4A (FRMD4A)およびその結合タンパク質Cytohesinはヒドラゲノム中に存在しており、ヒドラ由来のFRMD4AとCytohesinも複合体を形成することを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒドラを用いて細胞生物学的なアプローチによる実験を行う準備を整えることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、ヒドラ個体への外来遺伝子導入による細胞接着分子の可視化やCRISPR-Cas9法の確立に取り組み、細胞接着を介したシグナル情報伝達機構を明らかにしていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度より、遺伝子導入などの高額な試薬を用いた解析が必要となるため。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度に合算して使用し研究加速を図り、ヒドラ個体における遺伝子導入を試みる。
|
備考 |
研究代表者の研究室の研究成果及び成果報告に関するホームページ
|