glycosylphosphatidylinositol(GPI)は、タンパク質を膜に係留させるために用いられる糖脂質である。GPIによって係留される膜タンパク質は、細胞接着や受容体、そのリガンドなど多岐にわたるため、GPI生合成が異常になると細胞・組織・個体は大きなダメージを受ける。このようなGPIの生合成は、Pigと呼ばれる一連の酵素による多くの反応を介して行われる。 今まで、Pig酵素群はすべて小胞体に存在すると言われてきた。しかし、私達は、ショウジョウバエの組織においてはPigBと呼ばれる酵素だけが核膜に局在することを見出した。本研究では、PigBが核膜に局在する必要があるのかを検討することを目的としている。昨年度は、活性は有しているが核膜ではなく小胞体に局在するPigB(小胞体局在型)を作成した。本年度は、そのPigB(小胞体局在型)はPigB欠失変異体をレスキューできるかを検討したところ、レスキューできないことがわかった。本来のPigB(核膜局在型)はPigB欠失変異体をレスキューできるので、PigBの核膜局在はその機能に重要であることがわかった。さらに、解析を進めたところ、PigBを強制的に小胞体に局在させると、ライソソームによって分解されることもわかった。このことは、タンパク質が正しい細胞内領域に局在できない場合には、何らかの品質管理機構が働き、その異常局在のタンパク質は分解されることを示している。 PigB(小胞体局在型)で変異体をレスキューできなかった原因が、十分な量のPigB(小胞体局在型)が発現しなかったことかもしれないので、PigB(核膜局在型)の発現量を低下させ、PigB(小胞体局在型)とPigB(核膜局在型)が同程度の発現量になるように調整し、再度レスキュー実験を行った。その結果、やはりPigB(核膜局在型)は十分にレスキューできたが、PigB(小胞体局在型)はレスキューできなかった。この結果より、やはり核膜局在こそがPigBの機能に必須であることが確認された。
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