新たな開発されたより迅速に明るい蛍光を発する蛋白質cDNAをHes7遺伝子のコーディング領域にin frameにつないだレポーター遺伝子を持つ遺伝子改変マウスを作製した。このマウス胎仔の未分節中胚葉組織の培養を行ったところ、長時間に渡ってHes7の発現振動を単一細胞レベルでライブイメージングすることに成功した。さらに、このライブイメージング画像をHilbert変換することで単一細胞レベルの位相マッピングが可能になった。この未分節中胚葉細胞を単一細胞レベルに分散した後に集合塊を作らせたところ、全体が同期した発現振動が復活することが確認できた。また、Notchシグナル系のリガンドであるDelta-like1 (Dll1)を光遺伝学的操作で発現誘導できる培養細胞の開発にも成功した。このDll1発現細胞と上述の未分節中胚葉細胞との共集合塊を作ることで、光操作でHes7の発現振動の位相を変えたときに周囲の未分節中胚葉細胞に与える影響をライブ観察することが可能になり、分節時計における細胞間遺伝子発現振動の同期化を解析するシステムが構築できた。 Notchシグナル系のモジュレーターであるLunatic fringe (Lfng)遺伝子を欠損するマウスに上記の観察系を導入したところ、未分節中胚葉間のHes7の発現振動の位相の同期化が乱れるだけでなく、個々の細胞におけるHes7の発現振動自体にも振幅の低下等の異常が見られた。今後、Dll1の光操作系を導入して解析することによって、Lfng欠損時における細胞間遺伝子発現振動の同期化の異常を詳細に解析することが可能になった。
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