• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

オタマボヤの表皮が複雑な細胞パターンを個体差なしに形成するしくみの解析

研究課題

研究課題/領域番号 16K14735
研究機関大阪大学

研究代表者

西田 宏記  大阪大学, 理学研究科, 教授 (60192689)

研究分担者 小沼 健  大阪大学, 理学研究科, 助教 (30632103)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード胚発生 / 形態形成 / パターン形成 / 表皮 / オタマボヤ
研究実績の概要

ワカレオタマボヤは成体でもオタマジャクシ型をしており、我々ヒトを含む脊索動物に共通な体制を持ちながら、体を構成する細胞数が少なく、5日という短い世代時間をもつなど、他の脊索動物にない多くの特性を備えている。ワカレオタマボヤ体幹部の表皮は、単層上皮であり、左右鏡像対称で個体差のない、かつ規則性に乏しい複雑な二次元のパターンを持ち、部域ごとに細胞や核の大きさが異なることが知られている。また、このパターンには細胞レベルで見ても個体差がない。摂餌フィルターを分泌するためにこの複雑なパターンが必須であり、生存のためにも表皮のパターニングは重要であると考えられる。このパターンは、孵化直後の幼生で観察されないが、その後5時間ほどの間に急激にできあがってくることがこれまでの観察でわかっていた。
まず、表皮全体をユニークな特徴、細胞配置、遺伝子発現に基づき、複数のドメインに分割した。ドメインの境界は各細胞レベルの解像度を持つように決定した。次に、各ドメインに含まれる個々の表皮細胞に名前を付け、完成した成体表皮の細胞アトラスを完成させた。次に、その形成過程で個々の細胞がどのような挙動を取るのか、微分干渉や蛍光ライブイメージング(核と細胞膜)を用いて細胞分裂と細胞の挙動の観察を行った。その結果、パターン形成には基本的に、細胞移動や細胞死ではなく、細胞分裂の方向とタイミング、及び回数の制御が重要であることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

表皮のパターン形成には基本的に、細胞移動や細胞死ではなく、細胞分裂の方向と回数の制御が重要であることがわかった。それに加え、領域ごとに、いくつかの特記すべきおもしろい現象も観察された。Fol領域は、体幹部前側方の領域で、決まった数の細胞が列状に並んでいる領域である。この部分では、細胞が背腹方向の分裂を繰り返しながら列を形成してゆく様子が観察されている。腹側の表皮には、腹側正中線方向へ向かって小さな細胞を数珠つなぎに複数生み出すように不等幹細胞分裂を繰り返し行う、大きく丸い細胞が観察された。また背側には、正中線に沿って並ぶ一列の細胞があること、これらの細胞はもっぱら前後軸方向に沿って分裂すること、さらに、この正中線を挟んで、細胞分裂方向もほぼ左右対称であることがわかった。

今後の研究の推進方策

今年度に得られた結果は、表皮のパターニングという現象における新たな脊索動物モデル系の提供、および、ワカレオタマボヤの発生に関する将来の研究展開の重要な基盤情報を提供する。今後は、正常発生の記載だけに留まらず、発生を攪乱する実験も行い、表皮のパターニングという現象のメカニズムに迫っていくことを検討している。たとえば、特定の前駆細胞をレーザービームで破壊する、特定の遺伝子の阻害効果を検討するなどの実験的技術を導入し、パターニング形成を解析する予定である。

次年度使用額が生じた理由

本年度は研究が予想以上にうまくかつスムーズにいき、実験の条件設定をする必要がなくなり、そのために計上していた使用額を次年度使用に持ち越すことができた。

次年度使用額の使用計画

翌年度分として請求した助成金と合わせ、有効活用することにより研究を精力的に遂行する。具体的には、Kaedeによる細胞追跡を充実させ表皮のパターン形成を詳細に解析する予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] CNRS(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      CNRS
  • [国際共同研究] Chinese Academy of Science(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      Chinese Academy of Science
  • [雑誌論文] Internal and external morphology of adults of the appendicularian, Oikopleura dioica: an SEM study.2017

    • 著者名/発表者名
      Onuma, T. A., Isobe, M., and Nishida, H.
    • 雑誌名

      Cell and Tissue Research

      巻: 367 ページ: 213-227

    • DOI

      10.1007/s00441-016-2524-5

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Eccentric position of the germinal vesicle and cortical flow during oocyte maturation specify the animal-vegetal axis of ascidian embryos.2017

    • 著者名/発表者名
      Tokuhisa, M., Muto, M., and Nishida, H.
    • 雑誌名

      Development

      巻: 144 ページ: 897-904

    • DOI

      10.1242/dev.146282

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] DNA interference-mediated screening of maternal factors in the chordate Oikopleura dioica.2017

    • 著者名/発表者名
      Omotezako, T., Matsuo, M., Onuma, T. A., and Nishida, H.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 7 ページ: 44226

    • DOI

      10.1038/srep44226

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Redundant mechanisms are involved in suppression of default cell fates during embryonic mesenchyme and notochord induction in ascidians.2016

    • 著者名/発表者名
      Kodama, H., Miyata, Y., Kuwajima, M., Izuchi, R., Kobayashi, A., Gyoja, F., Onuma, T.A., Kumano, G., Nishida, H.
    • 雑誌名

      Dev. Biol.

      巻: 416 ページ: 162-172

    • DOI

      10.1016/j.ydbio.2016.05.033

    • 査読あり
  • [学会発表] Novel approaches targeting for maternal factors in the appendicularian, Oikopleura dioica2016

    • 著者名/発表者名
      Takeshi A Onuma, Masaki Matsuo, Tatsuya Omotezako, Hiroki Nishida
    • 学会等名
      日本動物学会
    • 発表場所
      沖縄コンベンションセンター(宜野湾)
    • 年月日
      2016-11-17 – 2016-11-19
  • [学会発表] Embryonic axis specification in ascidian embryos: oocyte to tadpole2016

    • 著者名/発表者名
      Hiroki Nishida
    • 学会等名
      日本動物学会
    • 発表場所
      沖縄コンベンションセンター(宜野湾)
    • 年月日
      2016-11-17 – 2016-11-19
    • 招待講演
  • [学会発表] Morphogenesis and patterning of the trunk epidermis of the appendicularian, Oikopleura dioica2016

    • 著者名/発表者名
      Kanae Kishi, Momoko Hayashi, Takeshi Onuma, Hiroki Nishida
    • 学会等名
      日本動物学会
    • 発表場所
      沖縄コンベンションセンター(宜野湾)
    • 年月日
      2016-11-17 – 2016-11-19
  • [学会発表] DNAi screening for maternal factors that are involved in embryogenesis of the appendicularian, Oikopleura dioica.2016

    • 著者名/発表者名
      Masaki Matsuo○, Tatsuya Omotezako, Takeshi A. Onuma, Hiroki Nishida
    • 学会等名
      日本動物学会
    • 発表場所
      沖縄コンベンションセンター(宜野湾)
    • 年月日
      2016-11-17 – 2016-11-19
  • [備考] Hiroki NISHIDA's Laboratoty

    • URL

      http://www.bio.sci.osaka-u.ac.jp/bio_web/lab_page/nishida/index.html

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi