研究課題/領域番号 |
16K14737
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
松井 貴輝 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 准教授 (60403333)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 左右非対称性 / ゼブラフィッシュ / 器官サイズ |
研究実績の概要 |
ゼブラフィッシュの左右差を規定する器官(クッペル胞)の形成において、クッペル細胞の数を実験的に減らすと、器官の機能・形態形成不全が起こり、左右差異常が誘導されることを発見した。この結果は、細菌などで知られている「クオラムセンシング」の機構が器官の機能・形態形成に関与する可能性を示唆している。そこで本研究では、ライブイメージングと数理解析を駆使して、そのしくみの理解を目指した。レーザー細胞除去法の精度を1細胞レベルに引き上げた厳密な数量的解析を行うことで、クッペル胞が機能するときとしないときに、前駆細胞の数に閾値があることを突き止めた。しかも、細胞数が閾値以下に下がった場合は、細胞の遺伝子は野生型にもかかわらず、シリアの回転速度が低下することでクッペル胞内で発生する水流(ノード流)に異常が生じ、左右差異常が引き起こされることも突き止めた。また、FGFシグナルの活性を可視化するために、Erkバイオセンサーをゼブラフィッシュ胚に導入し、Erkの活性をライブイメージングすることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
厳密な数量的解析を生体モデルに適応することは難しい面があったが、試行錯誤したことで、系の確立に成功し、器官形成に関して細胞数の閾値があることを示せたことで、概ね順調に進んでいると判断しているが、正常個体で、クッペル胞のサイズが大きくばらつくという予期せぬデータを得た。このばらつきが、生物の器官形成ロジックによるものか、実験誤差なのかを、詳細に精査する必要が出てきている。
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今後の研究の推進方策 |
実験データにばらつきが出た部分については、実験誤差なのか、それとも、生物の器官形成が持つ固有のばらつきなのかを精査することが必要である。そこで、ゼブラフィッシュの野生型、トランスジェニックなど異なるジェネティックバックグラウンドを持つ個体で、クッペル胞のサイズ、細胞数などを再解析し、ばらつきの由来を調べる。また、器官サイズとFgfシグナル活性の相関性がどのようになっているのかを解析する。これまでのデータの蓄積から、このばらつきは、実験誤差ではなく、個体ごとで器官サイズがばらつくことを示唆する結果が得られている。今後、このばらつきを許容する器官形成ロジックに関して、新たな仮説を立て、そのロジックを検証することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞数の計測、シグナル活性化の定量化を行っている際に予期しないデータのばらつきがでたので、その手法の再検討する必要が生じた。そのため、研究継続に必要な消耗品の費用を来年度に繰り越す。
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