研究課題
ES細胞から卵子を分化誘導できる培養系を用いて、様々な性染色体構成(XX、XO、XY)をもつES細胞から卵子を誘導することにより、生殖細胞自身の性が卵母細胞形成に与える影響について解析した。その結果、以下のことが明らかとなった。XX-ES細胞から誘導した卵母細胞の数は、1回の実験あたり約200個であるのに対して、XO-、XY-ES細胞から誘導した場合はその数がそれぞれ約20個、約5個と有意に少なかった。またXOとXYの間にも有意差が見られた。この原因として、(1)減数分裂時の相同染色体の対合異常、(2)減数分裂の遅延、(3)Y染色体上遺伝子の負の影響が明らかとなった。(1)は免疫染色の結果、XO-ES細胞、XY-ES細胞由来のほぼすべての卵母細胞に相同染色体の対合異常が認められた。減数分裂の対合異常は卵母細胞の細胞死を引き起こすことから、この点がXO-、XY-ES細胞由来の卵母細胞の低形成の大きな要因となっていると考えられる。(2)の詳細な原因は不明であるが、卵母細胞における減数分裂の遅延により周囲の体細胞との相互作用が乱れ、卵母細胞が細胞死に至る可能性が考えられる。(3)については、XY卵母細胞に発現するY染色体上の遺伝子をXX-ES細胞に強制発現させると、卵母細胞の形成が阻害されることから、この遺伝子が直接的に卵母細胞の形成に負の影響をもつことが示唆された。本研究によって、性染色体異常個体で卵子形成能が低下する原因として考えられていた相同染色体の対合異常、減数分裂の遅延、Y連鎖遺伝子の阻害作用の全てにおいて生殖細胞自律的な影響があることが新たに明らかとなった。本研究の成果は現在論文にまとめ投稿の準備を行っている。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 8件、 招待講演 14件)
EMBO J
巻: 36 ページ: 3100-3119
doi: 10.15252/embj.201796875
Nature Protoc.
巻: 12 ページ: 1733-1744
doi: 10.1038/nprot.2017.070