ターゲット遺伝子を絞った解析を行うための方法論の検討を行なった。イルミナなどの次世代シークエンサーは,短い配列を平行して大量に解析するのを得意としており,グローバルな発現解析には適している。しかしながら,特定の遺伝子,もしくは一群の遺伝子を対象とした解析では,1回の次世代シークエンサーによる解析で得られるようなギガ・オーダーのデータは必要としない。1つの遺伝子について,1万~10万個のデータが得られれば,実験区/対照区の間の十分な比較ができるので大きな無駄が生じる。次世代シークエンサーでも,「バーコード」配列で区別することにより,複数のサンプルを同時に解析することは可能であるが,10万個で十分なデータをギガ・オーダーで同時に解析するためには,1万種類以上のバーコード配列で区別しない限りは無駄が生じることになる。そこで,ミナイオンを用いた解析の手法を探った。これは,第3世代シークエンサーとも呼ばれ,次世代シークエンサーよりリード数のパーフォーマンスは,はるかに少ないが,10 kb以上の長い配列情報を取得するのに優れている。20~100塩基の配列をバーコードをはさんでつなぐことで,ミナイオンでの解析による最適なパーフォーマンスを得る手法の条件を探った。連結部位の制限酵素類の認識塩基配列の検討,ならびに,環状化を防いで10 bp以上の長い配列につなぐためのライゲーションの条件検討を中心に行なった。後者については,10 bp以上の長さに中央値をもつようなライゲーションの条件を見いだすには至っていないものの,3~5 kbの長さに中央値をもつライゲーションの条件を得ることが出来た。前者については,長くつなげることの条件と両立する条件の取得には至っていないが,ターゲット遺伝子を絞った解析において,次世代シークエンサーと同程度のパーフォーマンスを得る条件を見いだすことができたと考えられる。
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