研究実績の概要 |
多細胞生物は組織毎に固有の細胞パターンを有している。例えばハエの翅の感覚剛毛や哺乳類内耳の有毛細胞等は毛の配向性が揃うなど、個々の細胞の非対称な形(細胞極性)が、その細胞が存在する組織平面内の特定の軸に揃っており、これは平面内細胞極性(pla nar cell polarity, PCP)と呼ばれている。PCPの制御は組織の構築や維持、原腸陥入時の協調した細胞運動などさまざまな高次機能の基盤であり、その破綻は生命活動を直接脅かす。PCPの制御機構を理解することは、多細胞生物の高次発生原理の根本を解明することになり、まだ未解決の重要な課題である(McNeill, 2010, Cold Spring Harb. Perspect. Biol.)。 動物に比べ植物では平面内細胞極性を制御する分子基盤の解明はあまり進んでおらずよくわかっていない。我々はこれまでの研究から、ヒメツリガネゴケの原糸体の分枝形成が平面内細胞極性の分子機構の研究に優れていることに気づき、また植物特異的な1回膜貫通型の新奇タンパク質がこの制御に関わっていることに気がつ いた。そこで本研究はとりわけこの膜タンパク質の機能解析を進め、その後相互作用因子を明らかにし、これらの分子がPCPをどのように制御するのかを明らかにする。この研究を通じて植物PCP制御の分子基盤の全貌解明とその進化的理解を目指し、PCP研究に新たな突破口を切り開く。 当該年度は、この膜タンパク質(n1p)がとりわけオーキシン信号伝達系および細胞骨格系のなかでも微小管の制御と関係しながらPCPを制御するようであることを明らかにした。
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