研究課題/領域番号 |
16K14748
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
経塚 淳子 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (90273838)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 個体内の情報伝達 / イネ分げつ / ストリゴラクトン / フロリゲン |
研究実績の概要 |
環境情報はさまざまなシグナル物質に変換され植物体内を伝達される。植物はこの情報に基づき成長を調節し、個体内のリソースの配分を最適化し、最大の成長を達成している。このため、シグナル物質が、いつ・どこから・どこに・どれだけ輸送されるかは重要な問題であるが、個体レベルでのシグナル物質伝達の詳細については不明な点が多い。本研究では、植物の成長において「情報」が伝えられる範囲を明らかにすることを目的とする。 イネ科植物の「株」は分げつ(イネ科植物の枝分かれ)の集合体ととらえることができ、1本の分げつを切り出すと1個体として成長を始める。H28年度は分げつ数と個々の分げつの成長の関連を調査した。このため、野生型、ストリゴラクトン合成および信号伝達変異体(それぞれdwarf10 (d10)、d3)、分げつ数が増加するaberrant panicle 1 (apo1)、apo2変異体を用い、分化した分げつを人為的に除去することにより分げつ数を一定に保って成育させた。その結果、野生型でも分げつ数に応じて各分げつの成長が旺盛になった。また、ストリゴラクトンが機能しないd10、d3においても、分げつ数を抑えることにより各分げつの成長が旺盛になった。野生型と同様までには回復しなかったが、これは分げつ除去に伴うダメージによるという可能性が考えられた。一方、apo1、apo2変異体でも分げつ数が野生型よりも増加するが、分げつを除去しても残った分げつを旺盛にする効果は認められなかった。したがって、APO1、APO2はストリゴラクトンとは異なる経路で分げつを制御していると考えられた。 Hd3aとストリゴラクトンの分げつ間移行の解析については、H 28年度は解析のためのセットアップを行った。特に、解析に用いる予定であったマーカー導入組換え体の種子の発芽率が非常に低下していたため、新たに形質転換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究に使用予定であった形質転換体の発芽能力が著しく低下したため、新たに形質転換を作成する必要が生じた。得られた形質転換体から遺伝子発現レベルが十分高く、遺伝子がゲノムの1か所のみに挿入されており、さらに稔性が高い系統を選抜する必要があるため、今年度は解析を始めるまでに至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
解析に使用する形質転換系統が得られ次第、申請時に予定した解析に着手する。すなわち、Hd3a遺伝子にGFPを挿入した個体の一部の分げつに短日処理を行い、処理を行わなかった分げつでの花成の有無、Hd3aタンパク質の輸送の有無を調べる。また、花成のマーカーであるPAP2遺伝子を用いて同様の実験を行う。ストリゴラクトンに関しても分げつごとの水耕栽培を行い、リン濃度の情報が分げつを超えて伝えられるのかを表現型、マーカー遺伝子の局在、下流遺伝子の制御の3点を指標として調べる。情報が分げつ間を伝わることがわかれば、伝達パターンをマーカーを使って詳細に記述し、分げつ間を超えないことがわかれば、障壁となる要因を明らかにする。
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