植物が受容した環境情報は、さまざまなシグナル物質に変換され植物体内を伝達される。植物はこの情報にもとづいて成長パターンを調節し、個体内のリソースの配分を最適化し、最大の成長を達成している。したがって、シグナル物質が、いつ・どこから・どこに・どれだけ輸送されるかは重要な問題であるが、個体レベルでのシグナル物質伝達の詳細については不明な点が多い。そこで、本研究では、リン欠乏に対するストリゴラクトン合成誘導と日長に応答した花成ホルモンの合成と移動の2つの現象を研究対象として、それぞれについて情報が伝えられる範囲を明らかにすることを目的とした。 花成ホルモンの個体内移動については、イネのフロリゲン遺伝子であるHd3aとGFPと結合させたHd3a-GFPをHd3a遺伝子の制御領域を使って発現する形質転換イネを作出した。短日条件でHd3a:GFP発現と花成が誘導されることを確認した。さらに、Hd3aの茎頂到達を確認するために、Hd3aが受容複合体に受容された後に茎頂で最初に発現誘導される遺伝子であるPANICLE PHYTOMER2 (PAP2)をmCherryと結合させてイネに導入したマーカー系統を作出した。研究に必要な材料をすべてそろえることができたが結論を出すには至っていないため、研究期間終了後も解析を継続している。 Olyza longistaminata(Ol)は地下茎を作る野生イネである。花成を誘導する日長条件において、Olの地上部分ではHd3a遺伝子の誘導が起こり、火星が誘導さっるが、地下茎ではHd3a遺伝子の転写が誘導されず、また、花成も起こらない。そこで、Olの地上と地下茎の間のフロリゲンの移動について知見を得るために、OlにHd3a-GFPを導入したOl形質転換体を作成した。これについても早急にフロリゲンの移動を解析する。
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