研究課題
光合成や代謝など植物の必須機能を支える上で、核と葉緑体間の双方向シグナル伝達は重要な役割を果たすが、とりわけ葉緑体の状態を核に伝えるプラスチドシグナルについては、現象論的には多くの報告があるものの、分子メカニズムはほとんど明らかにされていない。本研究では特に、この情報伝達経路において中心的に機能する制御因子GUN1の役割と下流遺伝子制御の多様性に着目して、プラスチドシグナルによる核遺伝子発現制御の新しい側面を明らかにすることを目指した。今年度の研究から、これまで考えられてきたストレス応答の側面に加え、光合成機能を最適化させるための光環境応答においてもプラスチドシグナルが関与する結果が得られた。具体的には、光合成装置である光化学系Iと光化学系IIの中間に位置するプラストキノンの酸化還元状態に依存して、両光化学系複合体のタンパク質量のバランスを取るべく葉緑体から核への情報伝達が機能することを示す結果が得られ、経路とターゲット遺伝子の多様性を示唆することができた。一方で、GUN1タンパク質の機能については、FLAGタグ付加株を作出することができたものの、特に成熟葉におけるGUN1の発現量が低すぎるため発現や結合に関する解析が難航した。学会等で発現のタイミングに関する有用情報が得られたため、実験条件を調整して継続検討している。また、エピジェネティック制御に関する解析も一連の検討を行ったものの、残念ながら年度内に最終的な結論に至ることはできなかった。
3: やや遅れている
GUN1の発現量が当初予想していた以上に低かったなどの理由により、2年目に計画した課題を完了することができなかった。そのため、研究期間の延長を申請し、引き続き取り組んでいく予定である。
1年間の期間延長が認められたので、残された研究課題の推進に努める。計画の変更は基本的には行わないが、詳細な方針については今後の研究経過・実験結果を踏まえながら微調整するが、総じてプラスチドシグナル伝達に関する新提案に結び付けられるよう尽力する。
期間延長申請を提出し、承認されている。残された研究計画を進めるとともに、それらを含めた国際学会発表や論文投稿などの成果発表に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (1件)
Nucleic Acids Research
巻: 45 ページ: D551-D554
10.1093/nar/gkw1131