研究課題
植物防御応答に重要な分子サリチル酸(SA)は細胞内/細胞間での自己シグナル増幅機構を持つ。このような分子に対する細胞応答機構を明らかにするには、多細胞体を用いた研究では出力が複雑になりすぎるため、一細胞レベルでの解析が必須である。そこで、本研究ではSA応答性プロモーターレポーター植物由来のプロトプラストをマイクロ流体デバイス内に封入し、タイムラプスイメージングと組み合わせることで、様々なパターンでのSA刺激下で、定量的な一細胞レベルの細胞応答を測定する系を構築し、SA シグナル系分子機構のさらなる理解を進めることを目指した。H28に明らかとなった核局在型eYFPを用いたPR1レポーター植物のサイレンシング問題を受けて、H29は新たにレポーター植物を構築し直し、定量的PCRを用いて真の1コピー挿入形質転換体を得ることを試みた。この際、SA応答検出系の時間的精度を上げるため、より成熟が早く、かつ半減期が短い、より鋭敏なレポーターとなる核局在型VenusやmStrawberryを用いたレポーター植物を再度作製し直し、現在、定量的PCRを用いて真の1コピー挿入形質転換を選抜しようとしている。また、SAはジャスモン酸(JA)との強い相互作用があるため、PR1レポーターとJAマーカー遺伝子であるVSP1を用いたプロモーターレポーターを異なる色の蛍光タンパク質で構築し、一つの植物中で同時にSAとJAの応答を検出できる二重レポーター植物も構築した。デバイスに関しては、まずはチャンバー型デバイスを用いてeYFPによるPR1レポーター植物由来のプロトプラストをチャンバー中にトラップし、SA応答の観測を試みた。しかし、植物個体としてはSA処理によってeYFPシグナルが検出できるにも関わらず、プロトプラスト状態ではSA処理後にeYFPが検出できないという問題が生じた。現在、その原因を調査中である。
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