樹木の紅葉は 100 年以上前から研究対象とされて論文が発表されてきたにも関わらず、その紅葉のメカニズムは未解明のままである。樹木の紅葉においては秋になって短日条件になるとともに気温が低下すると葉柄の付け根に離層が形成されて光合成産物の転流が起こらなくなり、葉内の糖濃度が上昇することによりクロロフィル分解とアントシアニン合成の誘導が生じると信じられてきた。一方で紅葉を誘導するのはショ糖ではなく「クロモゲン」と呼ばれる化合物が紅葉誘導を引き起こすという考えもなされてきたが、この化合物の存在自体が不明のままである。当研究者は水生植物のオオカナダモの切断葉においてショ糖添加した培地で培養することによって紅葉を誘導できる実験系を確立し、そこにおいて「クロモゲン」の実体化合物を 2 種特定した。そこで本研究においては紅葉する樹木のカキ品種においてもクロモゲンが存在しているのか、カキにオオカナダモ由来のクロモゲンを投与した時に紅葉を誘導できるのか、その実験樹木としての接木体を作成した。その結果、カキ品種の富有の紅葉からの低分子抽出液にオオカナダモ切断葉に紅葉を誘導する化合物が 2 種類以上存在していることを明らかにした。しかしその化合物の不安定性もしくは複数分子種存在する可能性から、完全精製から化学構造決定には至らなかった。また同一のカキの台木に紅葉する富有と紅葉しない台湾正柿のキメラ個体を作出することができた。
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