研究課題
本研究は、クラミドモナスが示す走光性の正か負かを、細胞内が酸化的か還元的かという指標にもちいることで、新しいミュータントを単離し、植物細胞のレドックス恒常性維持の分子メカニズムに新しい切り口から迫ることを目標にしている。単細胞緑藻クラミドモナスは、光合成と細胞運動の両方でモデル生物として用いられている珍しい生物である。我々は以前、光合成活性変化によって変化する細胞内レドックス状態変化が、走光性の正と負を切り替えることを見出した。即ち、細胞内が酸化的になると正、還元的になると負の走光性を示す。これは、酸化的になったときは光合成活性を上げて還元力を得て、逆に還元的なときは光合成活性を下げて酸化的にするという、レドックス恒常性維持のための生体反応が細胞行動となって現れたものと思われる。この分子機構を調べるには、この行動が示せない変異株を得れば良い。1年目のH28年度は、ミュータントの単離を行った。常に正の走光性、常に負の走光性など、複数の興味深い変異株を得ることができた。現在、それらの光合成活性を調べることで、これらが細胞内レドックス状態に異常があった結果それぞれの表現型を示しているのか否かを調べている。これらのうち1つは活性酸素再生量が野生株に比べ多いことが分かり、期待がもてる。さらに、細胞内のレドックス状態を可視化・定量する目的で、酸化還元感受性蛍光タンパク質を鞭毛に導入した。試験管内でレドックス電位-蛍光強度の較正曲線を描くことで、生体内のレドックス電位を記述することに成功した。現在論文作成中である。
2: おおむね順調に進展している
ミュータントの単離、生体内レドックス状態可視化定量など、概ね当初の予定通りの結果が得られていると言える。
ミュータントをさらに単離するとともに、表現型解析の結果細胞内レドックス状態に異常のあるものを選別し、遺伝子同定を行う。
変異株単離とその表現型の検定に多くの時間を要したため、予定していた次世代シーケンスによるゲノム解析を当年度内には行わないこととなった。
H29年度初頭に既に複数株について解析を行い、約半額についてはこれで使用した。残りは現在解析中の株について使用する予定である。
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