研究課題
植物において、体軸の形成は受精卵の細胞内極性にまで還元されるが、受精卵を極性化させるしくみについては、これまでほとんど分かっていなかった。そんななか、私はシロイヌナズナの受精卵極性に必須の転写因子群を独自に見出し、これらを用いてライブイメージングや化合物スクリーニングを行うことで、受精卵を極性化させる分子メカニズムの理解を目指した。本年度は、シロイヌナズナのin vitro胚珠培養系と、組織深部の高精細な観察を可能とする二光子顕微鏡システムを組み合わせることで行った受精卵の内部動態の精緻なライブイメージングを行った。このライブイメージング系と、細胞骨格の特異的な阻害剤の投与実験を組み合わせることで得た成果を論文として公表するとともに(Kimata et. al., 2016)、多くの国内外の学会などでも発表した。また、藤研究機関に所属する化学者らが独自に作成した化合物群を用いてスクリーニングを行った結果、植物細胞の分裂を特異的に阻害する新規化合物を発見し、その成果も論文として公表した(Nambo et. al., 2016)。さらに、精細胞と卵細胞のそれぞれから受精卵に持ち込まれるSSPとHDG11/12が、WRKY2転写因子を介在することで協力し、受精卵でWOX8遺伝子の発現を誘導することで、受精卵の極性化と胚のパターン形成を制御するメカニズムも明らかにした。詳細な遺伝学的および生化学的解析を完遂した結果、論文発表に至った(Ueda et. al., 2017)。
1: 当初の計画以上に進展している
植物細胞の精緻なライブイメージング系を立ち上げ、それと化合物スクリーニングとの融合によって得た成果を既に論文として発表した。加えて、受精卵の極性化のメカニズムを明らかにした論文も2報、報告するに至った。
当初の計画以上に研究が進展しているので、このまま受精卵極性の網羅的なライブイメージングや阻害剤の解析を続ける。
ライブイメージングに立脚した化合物スクリーニングの結果、予想よりも早く有効な薬剤が見つかったので、その分、ライブイメージングに必要な消耗品(ガラスボトムディッシュなど)の使用量が想定よりも少量で済んだ。
複数の阻害剤が得られたので、それらの標的分子の同定を行うための消耗品(質量分析試薬など)も多く必要となる。したがって、翌年度分として請求した助成金と合わせた金額をそれらの購入に充てる。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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