研究課題
トマト黄化葉巻病ウイルスの病原性タンパク質 βC1 は、シロイヌナズナにおいては、AS1に結合しRNAサイレンシングを誘導し、ウイルスの病徴を強化する。Nicotiana benthamiana (Nb:このウイルスの宿主となる) 植物の下位葉にβC1を一過的に発現させると、病徴は下位葉では見られず上位葉に出現することから、βC1タンパク質などが植物内を移動する可能性が考えられた。本研究では、βC1による上位葉における病徴出現におけるAS1の関与の仕組みを研究した。平成29年度までの研究により、(1) βC1のNbAS1への結合と病徴発現にはNbAS1 のカルボキシル末端側の配列(PC)が必要であること、(2) このPC領域をN. benthamiana植物の下位葉で過剰発現させると、上位葉での病徴が軽減されることがわかった。(3) 野生型植物とNbas1(AS1ノックダウン)株を用いて、4 通りの接ぎ木植物を作製し、病徴の程度を調査した。野生型-Nbas1とNbas1-野生型では、どちらにおいても病徴レベルも低かったが、ともに同程度のレベルの病徴を示した。平成30年度は、接ぎ木実験を継続した。接ぎ木の結果を総合すると、接ぎ木そのものが、βC1の移動、あるいは病徴発現を阻害する可能性が考えられた。またAS1のC-末端側ペプチドはβC1との結合に関与しているだけでなく、βC1の細胞内局在も支配していることがわかった。AS1の全長は主に核小体に局在するが、βC1は核質と細胞質に存在し、AS1との共導入ではβC1は核小体にも見られた。以上、βC1の長距離移動における AS1の役割はまだ不明であるが、本研究により、AS1のC末端側ペプチドを細胞内で発現すれば、βC1をトラップするデコイとして利用でき、上記ウイルスの感染に強い植物を作成できる方途が開けた。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 2件) 備考 (2件)
Plant and Cell Physiology
巻: 59(7) ページ: 1385-1397
doi: 10.1093/pcp/pcy031
Plant Biotechnology
巻: 35 ページ: 39~49
doi: 10.5511/plantbiotechnology.18.0129b
Microbiol. Resour. Announc.
巻: 7 ページ: 1-2
DOI: 10.1128/MRA.01184-18
http://www.bio.nagoya-u.ac.jp/~yas/dmcb/indexjp.html
https://www3.chubu.ac.jp/faculty/machida_chiyoko/