研究課題/領域番号 |
16K14755
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
橋本 隆 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (80180826)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 左右性 / シロイヌナズナ / 根 / 微小管 / チューブリン |
研究実績の概要 |
軸器官ねじれ現象を説明する2つのモデル(表皮細胞主導型伸長モデルと細胞層間偏差調整モデル)を検証するために、アラビドプシス植物体軸器官(根、胚軸)の細胞層特異的に微小管制御因子や微小管と無関係な細胞伸長制御因子を発現させ、軸器官の表現形を解析する。 1)細胞伸長を抑制することが報告されている遺伝子をC1プロモーターを用いて根の内層細胞特異的に発現させたところ、植物体の生育阻害が見られ、次世代が得られなかったか(ACT2fiz1, IAA17aux3-1)、生育に影響を与えなかった(ACT1)。 2)同様にPP2C-DとSAUR9を発現させたところ、根の伸長方向に若干の変化が見られた。 3)カタニン矮性変異株にGFP-KTN1を表皮細胞特異的に発現させたところ、根の伸長が部分的に相補された。 4)4種類の優性変異βチューブリンをGFP融合タンパク質としてWRKY72プロモーターを用いて根の表皮細胞特異的に発現させたところ、TUB6(S95F)とTUB6(T178I)で目的とする細胞層特異的発現系統が得られた。TUB6(S95F)-GFP発現個体では根の表皮細胞が強く右巻きにねじれ、表層微小管は弱い左巻きヘリックス構造を取っていた。一方、TUB6(T178I)-GFP発現個体では根の表皮細胞が弱く左巻きにねじれ、表層微小管はわずかに右巻きヘリックス構造を取っていた。この予備的な実験結果は、表皮細胞主導型伸長モデルを支持していると考えられるが、細胞層間偏差調整モデルを否定する結果ではない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
幾つか試した遺伝子のうち、βチューブリン変異の2系統において目的とする結果が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
ねじれ形質を示す個体の根については、各細胞層の細胞形態や微小管配置に関する、より詳細な情報を得る。効果のあった変異チューブリンを内皮細胞層特異的に発現させる系統も作成し、表皮細胞特異的発現系統を比較するのは非常に有効である。また、他のチューブリン変異についても、さらなる検討を加えてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験のスタートが若干遅れたこと、および抗体、制限酵素など比較的高価な物品の購入が予想よりも低く抑えられたことにより、次年度使用額が生じた。また、本年度は旅費を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
複数のコンストラクトを作製し、多くの形質転換植物個体を解析するための分子生物学実験に必要な消耗品に使用する。また、国内学会の旅費を使用する。
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