ゲノムを持つオルガネラであるミトコンドリアは、呼吸によるATP生産だけでなく、代謝経路としての役割や生殖制御において非常に重要な役割を持っている。ミトコンドリアゲノムの遺伝子発現制御(転写、RNA成熟化、翻訳)は、主に核にコードされたタンパク質によって厳密に調節されている。しかしながら、ミトコンドリアゲノム改変手法が無かったため、個々のミトコンドリア遺伝子の細胞機能における役割については全く解析されていない。申請者らのこれまでの研究から、特に植物においては、RNA結合蛋白質であるPPR蛋白質によってミトコンドリアRNAの転写後調節されていることを明らかにしてきた。また、PPR蛋白質を改変することで、設定した標的RNAに特異的に結合させることができるようになった。本研究では、そのPPR蛋白質を応用利用することで、植物ミトコンドリアの遺伝子発現を人為的に操作することを目指す。昨年度は種々のPPR-RNaseを作製し、レポーターアッセイを用いて標的RNA分解が可能かどうか解析を行い、20%程度のノックダウン効果が得られた。本年度は、実際のミトコンドリアRNAに結合するPPRの作製を試み、局在性とNucleaseによるRNA分解について検証を行った。標的としてミトコンドリア呼吸鎖複合体遺伝子のRNAを設定し、標的位置を2箇所、さらに様々な長さの認識配列を設定し、PPRを作製し結合能を評価した。結果、配列特異的に結合するPPRの作製に成功した。次に動物細胞での検証の結果、ミトコンドリアへの局在性及びわずかながらノックダウン効果が得られた。今後、ノックダウン効率を上げ、植物細胞に適用していくことで、ミトコンドリアノックダウンライブラリーを作製していくことができると考えている。
|