研究課題
本研究では、植物感染性線虫の感染過程において、線虫側で働く遺伝子を同定するために必要な分子遺伝学的解析技術を確立すると共に、新しい線虫培養法の確立も目指す。これまで、線虫培養にトマトをエサとして用いていたが、トマトは大型で無菌栽培できず、培養中の線虫のコンタミの恐れもあるため、野生型線虫1系統のみを維持するにとどまっていた。本研究では、スクリーニングなどにより得る多系統の線虫を維持・管理する必要があるため、大型トマトを使わず、閉鎖系(プレート内)で線虫が培養、維持できる新しい系を確立する。一方、我々は、線虫のCLE遺伝子を含めた様々なエフェクター遺伝子が植物への感染に関与することを明らかとしているが、本研究では、線虫遺伝子の線虫内でのノックダウンや過剰発現等の遺伝子操作に加え、線虫突然変異体のスクリーニングを可能にする系を確立し、線虫側の遺伝子機能解析を行う。植物ホルモン非存在下で地上部の影響を排除した切断根を培養することが可能なマメ科植物の西洋ミヤコグサ由来のスーパールートは、寒天培地上でも、液体培地中でも成長旺盛で、無限に根を形成し続けることが知られている。これまでに、我々は、スーパールートにもサツマイモネコブセンチュウが感染可能であることを見いだした。また、この線虫感染スーパールートを用いて、寒天培地で増殖が可能であることを明らかにした。このことから、センチュウ類の新たな培養系が確立できたと考えている。
2: おおむね順調に進展している
今年度、我々は、スーパールートにもサツマイモネコブセンチュウが感染可能であることを見いだした。また、この線虫感染スーパールートを用いて、寒天培地で増殖が可能であることを明らかにした。このことから、センチュウ類の新たな培養系が確立できたと考えている。
サツマイモネコブセンチュウ側の遺伝子レベルでの研究が、未だに進んでいない。これまでに、センチュウを感染させた植物内で、RNA sequenceを行い、感染過程に応じて、植物体とセンチュウ体のRNAを同時にシーケンスしていることから、この解析から行い、どのような感染ステージにおいてどのようなセンチュウ遺伝子が機能するか予想することを行う。
本研究では、植物感染性線虫を用いた分子遺伝学的研究手法の確立と展開を目指しているが、熊本地震の影響で植物育成補助を行う研究補助員の雇用が遅れたことにより、線虫遺伝子の機能を調査するための、ノックダウンや過剰発現等の遺伝子操作、線虫の変異体のスクリーニングの系の確立が遅れた為全体的に研究遂行が遅れている。現在は、実験系の確立は終了し、30年度、研究補助員の雇用により機能解析を完遂する。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件)
Plant Cell Physiol.
巻: 58 ページ: 1848-1856
Frontiers in Plant Science
巻: 8 ページ: 1195