研究課題/領域番号 |
16K14762
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
村田 隆 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 准教授 (00242024)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オプトジェネティクス / 植物細胞 / 微小管 |
研究実績の概要 |
植物細胞においては、微小管は紡錘体の形成前にプレプロフェーズバンドと呼ばれる帯を作り、細胞表層に細胞質分裂シグナルを形成する。このシグナルに向かって細胞板をガイドするのも微小管と考えられている。本研究計画では細胞内の微小管ダイナミクスを光照射により局所的に制御する分子ツールを開発し、微小管構造の細胞内配置を改変することにより細胞分裂の方向を制御する。 蛍光タンパク質mCherry、微小管結合タンパク質MAP4の微小管結合ドメイン(MBD)、光照射によりタンパク質結合を起こす配列(LovPep)を連結したmCherry-MBD-LovPep発現タバコ培養細胞を作製した。この細胞の微小管はmCherryで標識された。さらにLovPepに結合するePDZ配列とGFPを連結したePDZ-GFPを導入すると、GFPはmCherryで標識された微小管上に青色光依存で集積した。しかしながら、ePDZ-GFPにMBDを連結したePDZ-GFP-MBDとmCherry-MBD-LovPepを同時発現する細胞は、光照射下で培養しても期待される形態変化を示さなかった。顕微鏡下で観察すると、GFPとmCherryの両者が明るく光っている細胞は少なかったため、発現量が不足している可能性が考えられた。 微小管切断ツールの作製のためにタバコ培養細胞からKatanin遺伝子のcDNAをクローニングし、mCitrineを連結してタバコ培養細胞に導入した。導入した細胞はカタニン突然変異体で報告されている網目状の微小管配列を示した。Katanin-mCitrineはドミナントネガティブ効果を持つと考えられた。KataninとmCitrineの接続方法を改良し、野生型タンパク質と同じ活性を持つ融合タンパク質を設計する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、微小管は細胞の隅(細胞壁と細胞壁が接する場所)で安定化あるいは不安定化され、その結果として細胞全体の微小管配列が変わることを前提としていた。この考えは広く浸透しており妥当な考えと思われる(Ambrose et al. Nat. Comm.2.430, 2011 他)。翌年度の予備実験として、細胞の端に着目してタバコ培養細胞の微小管の挙動を3Dタイムラプス解析したところ、タバコ培養細胞においては微小管の配列は細胞の隅で決まるのではないことが明らかになった。このことは予想外の発見である一方で、細胞のどこの微小管をどのように操作すれば良いか見直しが必要になった。この解析に時間を要したため、研究の遂行に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は次の実験を行う。1)mCherry-MBD-LovPepとePDZ-YFP-MBDの両者を高発現する細胞が得られなかったので,1つのプラスミドにこれら2つのDNA断片を組み込み、1回の形質転換で2つを発現する細胞を得る。プロモータには安定して高発現するシロイヌナズナユビキチンプロモータを用いる。2)前年度の結果はカタニン融合タンパク質がドミナントネガティブ効果を持つものだった。そこで、微小管切断活性を持つカタニンを発現させるため、カタニンとmCitrineの接続順を逆にする。また、リンカー長の検討を行う。3)間期の細胞の表層微小管の動態を解析し、細胞内のどの部位の微小管を操作すれば良いか知見を得る。4)細胞板形成中の細胞の微小管を操作するため、微小管を光照射で直接切断するための蛍光タンパク質SuperNova融合チューブリンを発現する細胞を作製する。 これらの実験を行い、プレプロフェーズバンド形成期および細胞板形成期の細胞の微小管を破壊もしくは安定化して分裂面の光照射による操作を行う。
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