連続光障害耐容性を示す栽培トマト品種(R品種)と連続光障害感受性の品種(S品種)とを交配して得られた雑種第2世代から選抜した連続光障害耐容性個体を用いて、全ゲノム解析を行い、1塩基多型(SNP)解析を行った。その結果、R品種型SNPは染色体6番下腕に集積していることが分かった。その領域に座乗し、かつR品種とS品種の遺伝子間でアミノ酸配列が変化する遺伝子を探したところ、72個の遺伝子が該当した。 一方、R品種とS品種とをそれぞれ16時間明期8時間暗期(LD)条件で栽培したものと、連続光条件(LL)で栽培したものとについて、完全展開葉を用いて比較トランスクリプトーム解析を行った。品種間および栽培条件間(LDとLL)の比較により、発現量が2倍以上または1/2以下に変化する遺伝子を抽出した。しかしながら、この中には上記SNPを持つ72個の遺伝子は含まれなかった。また、ホモロジー検索等によってそれらの機能を推定したが、多くが機能未知遺伝子であった。 以上の結果を踏まえ、再度連続光障害の発生機構を生理学的に見直すため、光合成速度、クロロフィル含量、デンプン粒の蓄積量、活性酸素含量、カルテノイド含量、アントシアニン含量を、LD条件で栽培したものと、LL条件で栽培したものとについて、完全展開葉を用いて測定した。その結果、光合成速度の指標の一つ、光化学系Ⅱ(PSⅡ)の最大量子収率(Fv/Fm)とクロロフィル含量について、S品種では、LD栽培に比べLL栽培では有意に値が減少したのに対し、R品種では、LD栽培とLL栽培とで有意差が無いことが明らかとなった。 今後、比較トランスクリプトーム解析の結果から絞り込まれた遺伝子を、光化学系Ⅱとクロロフィル含量に関連するものに絞り込み、責任遺伝子の特定を続けていく計画である。
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