研究実績の概要 |
真核生物の形態形成では,細胞分裂の制御は根源的かつ必須な現象である.しかし,動植物間では分裂様式は大きく異なり,植物ではCell plate 形成を介した 分裂様式を,動物では収縮環形成を介した分裂様式をとる.いずれの分裂様式においても,細胞骨格系と細胞内タンパク質輸送系に関わる分子群が重要な機能を 果すことが知られているが,その知見は,もっぱらタンパク質レベルのものに限られており,mRNA レベルでの知見はほぼ皆無である.本研究課題では,内在性 mRNA とタンパク質を同時に,ライブで一分子可視化できる蛍光検出法を開発し,細胞分裂において機能する分子群のmRNA/タンパク質の両レベルでの制御を時空 間的に明らかにして行く.動物細胞の収縮環形成に関わる分子群の解析では,ヒトの線維芽細胞HEK293Tを実験材料として用い,収縮環構造体の主構成因子と考えられるアクチンタンパク質とそのmRNAに注目した.アクチンタンパク質分子を可視化するために,酵母の Abp140 に由来する 17 アミノ酸からなるアクチン結合ドメインとmiRFPとの融合遺伝子Lifeact-miRFPを作製した.これをHEK293T細胞において一過的に発現させたところ,細胞内のアクチン繊維が可視化されることが分かった.次に,アクチンmRNAを可視化するために,そのmRNA内の2箇所の部位を認識するRNA結合タンパク質Pumの変異体とGFPのN末断片,C末断片との融合遺伝子を作製し,発現べクターに組み込んだ.このプローブをHEK293T細胞において一過的に発現させたところ,細胞質中に拡散したGFPの蛍光が検出された.そして,これらの2種類のプローブを共発現させた場合には,細胞内の繊維状構造と細胞質にそれぞれ,異なる色のシグナルが検出されるものの,共局在は全く検出されなかった.
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