研究実績の概要 |
CDC42EP4欠損マウスにおける小脳神経回路の平行線維-プルキンエ細胞間シナプスの異常、具体的には軸索終末、樹状突起棘、グリア突起の3要素の空間配置の異常の精査のために集束イオンビーム走査電子顕微鏡FIB-SEMを用いることが当初の目的であったが、従来型のTEMおよびssTEM-3D再構築解析によってグリア突起の後退とのシナプス前後膜の接着がアクティブ・ゾーン外で拡張していること、N-cadherinとMYH10(非筋型ミオシンII重鎖)の増加がその分子メカニズムに含まれることを示した(Neurochem Int 2018 in press)。並行して解析を進めているSEPT3欠損マウスの空間弁別障害から嗅内皮質-海馬歯状回顆粒細胞間シナプス機能異常が示唆されたため、共同研究者深澤有吾教授(福井大学医学部神経解剖学・組織学講座)が名古屋大学のFIB-SEM装置(Scios, FEI社製)を用いて予備的に解析を行ったところ、シナプス結合の特徴的な異常が認められたため、解析結果については一部口頭発表済みであるが、論文化のためにさらなる精査を進めている。immunogold標識試料は凍結融解ステップでの組織の劣化が避けられず、非標識試料より難度が高いため、非標識試料での経験を積んだ段階で検討を再開する。なお、上記ののシナプス異常がssTEMでは検出できなかった理由として、z軸方向の分解能が低いことだけでなく、3D再構築と定量的パラメータの抽出を樹状突起およびスパイン中心に行ってきたことも一因と考えられた。今後も両手法を併用・比較しつつ、特長を理解したうえで併用することが重要といえる。
|