研究実績の概要 |
(最終年度の研究) ミナミコメツキガニの自動カウントを背景差分法によって試みていたが、十分な認識率が得られていなかった。そこで、別の方法として、畳み込みニューラルネットワークによる深層学習を試みた。学習用画像としてカニ有を53,899枚、カニ無を60,466枚、検証用画像としてカニ有とカニ無それぞれ2,500枚を用いて試験したところ、適合率0.85, 再現率0.91、分類精度88%でカニの判別をすることができた。さらに反復学習を試みたところ、分類精度は91%に向上した。
(研究期間全体を通じた成果) 時間生物学では、生物のリズミカルな行動を生み出す同調因子を確かめることが重要である。実際の生物は自然の中で生息しており、温度、湿度、気圧、照度などの環境パラメータの影響を受けている。この研究では、このような複雑な状況下における生物リズムの発生メカニズムを明らかにすることを目的として、生物を異なる地点におき、異なる自然環境下での行動を計測し、インターネットで伝送する装置を開発した。研究の開始時は哺乳類に着目し、ハムスターの行動を環境要因とともに計測する装置を開発して、北海道と山口に置いたハムスターの行動リズムの違いについて研究した。 その後、よく解明されていない潮汐リズムをもつミナミコメツキガニの行動を解析するための装置も開発した。この装置を山口大学と琉球大学に設置し、2018年7月10日~8月31日の行動データを取得した。結果として、潮汐を与えたミナミコメツキガニの行動には、ある程度の周期性が見られるが、潮汐を与えないものについては1カ月半から2カ月ほどで行動リズムが乱れる傾向があることが分かった。また、水槽内における潮汐リズムを自動的に発生するため、潮汐計算のプログラムを作成した。これにより、潮汐データを入力する手間が省けるようになるとともに、実験の精度を向上させることができた。
|