研究課題/領域番号 |
16K14778
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
寺北 明久 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (30212062)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | オプシン / 発色団レチナール / 光遺伝学 |
研究実績の概要 |
一般に、オプシンがA2型レチナールを結合すると、A1型レチナール結合型オプシンと比較して、長波長シフトすることが知られている。その性質を光遺伝学に応用するために、培養細胞系を用いて、ロドプシン遺伝子とA1/A2レチノイド変換酵素を同時に発現し、波長感受性の解析を、以下の通りに行った。 ・前年度においては、培養細胞でオプシンを発現させ、レチノイドを加えることなく、光反応性を解析した。今年度は、全トランス型レチナールを結合し、そのことを分光学的に解析できることが分かっているナメクジウオロドプシンをゼブラフィッシュで同定されたA1/A2レチノイド変換酵素(Cyp27c1)と同時に培養細胞で発現させた。そして、レチナールの添加なしに、界面活性剤を用いて可溶化し、そのロドプシンの光反応を利用した分光学的解析により、A2レチナールを結合しているロドプシン類の割合を解析した。その結果、酵素により生成されたA2レチナールを結合しているオプシンの割合は、結合していたとしてもわずかであることが示唆された。ゼブラフィッシュのA1/A2レチノイド変換酵素によりレチノールがA1からA2に変換されることは既に報告されているので、今後、発現オプシンの細胞内分布と変換酵素の細胞内分布の比較を進めことが重要であることが示唆された。 ・ポリシストロニックにロドプシン遺伝子とA1/A2レチノイド変換酵素遺伝子を発現させる遺伝子コンストラクトを用いた解析を上述と同様にナメクジウオロドプシンを用いて開始し、上述と同様の結果が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レチナールA1からA2へと酵素的な変換を利用して、全トランス型レチナールを結合できるオプシンにA2が結合することを分光学的に捉えることを試みたが、十分量のA2を結合していることを示す結果を得ることはできなかった。一方で、A2結合オプシンの比率を高めるためには、オプシンの局在と変換酵素の局在を一致させる必要がある可能性が明らかになった。昨年度からの研究進展状況を合わせて、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、培養細胞系を用いて、ロドプシン遺伝子とA1/A2レチノイド変換酵素を同時に発現し、生成オプシン色素の吸収スペクトルや波長感受性の解析を行う。その際、培養細胞にロドプシン遺伝子とA1/A2レチノイド変換酵素を1つのプロモーターによりポリシストロニックに発現させ、オプシンがA2レチナールを結合する割合が高くなるような系も利用する。また、変換酵素を細胞膜近傍に存在させるために、他のタンパク質との融合タンパク質として発現させることも試みる。 また、オプシンとA1/A2レチノイド変換酵素をゼブラフィシュの運動を制御する神経細胞あるいはセンチュウの運動神経に発現させ、生体の窓の波長域付近の光により運動が制御されるかの解析を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養細胞を用いた実験において、A1/A2レチノイド変換酵素の細胞内局在が、オプシンのA2レチナール結合効率を高めるために重要である可能性が示唆された。この点は本研究系計画にとって重要であるので、さらに培養細胞を用いた詳細な解析を行った後、動物を用いた実験を開始する計画とした。そのため、動物実験に関わる経費を次年度に使用することとした。
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